EYは、テクノロジー業界に関する最新のレポート「2024年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10」を発表した。
同調査によると、マクロ経済の弱さとコスト削減を特徴とするテクノロジーセクターにとって、2023年は厳しいスタートとなったが、その後、生成AI(ジェネレーティブAI)を中心とした企業戦略が自信回復のきっかけとなったとのこと。こうした背景から、同調査では、デジタルトランスフォーメーション戦略への生成AIの導入が初ランクインした。しかしながら、ほとんどの企業(90%)ではAIの成熟度がまだ初期段階にあると警告し、人を中心とした安全で倫理的なAIの導入をサポートする「AIコントロールタワー」の設立を呼び掛けているという。
2024年テクノロジー企業ビジネスオポチュニティのトップ10は以下のとおり。
- デジタルトランスフォーメーション戦略への生成AIの導入と「コントロールタワー」の確立
- フロントオフィスとバックオフィスのユースケースにおけるターゲットを絞った生成AI使用の実験
- 急成長する「エッジエコノミー」における新しいデジタルインフラへの投資
- 新興市場でのサプライチェーンの増設
- AIロードマップに沿った企業の投資戦略策定
- プラットフォームのビジネスモデルを活用した先進テクノロジーの産業化と規模の拡大
- 新規および将来の税負担に対して積極的かつ包括的な対応の確立
- 環境への取り組みにおけるデータセンターのエネルギー効率の優先
- 高度なリスクツールへの投資による、コスト、リスク、レジリエンス、アジリティ間のトレードオフの再検討
- 現在および将来のサイバーリスク軽減のための高度なテクノロジーの導入
フロントオフィスとバックオフィスのユースケースにおける生成AIを試すオポチュニティも初登場で2位となった。同調査では、企業はすべてのユースケースに生成AIを活用するのではなく、インパクトが大きく価値の高いユースケースと、トランスフォーメーションの機会をターゲットにすべきだと述べている。たとえば、ソフトウェアコーディングで生成AIを使用すること(フロントオフィス)や、人材を惹きつけて保持するためにAIを導入すること(バックオフィス)などがあるとしている。
また、業界のリーダーたちは、AIがビジネスの効率的な運営に役立つ可能性を強く認識しており、65%のテクノロジー企業のCEOが、競合他社に戦略的優位性を与えないために、今すぐ生成AIに取り組む必要があると述べている。
このような状況の中で、AIロードマップを軸にした企業の投資戦略の策定が、5位にランクインしたことは想定どおりだという。AIおよび大規模言語モデル(LLM)の使用が急速に進んでおり、企業はM&A、そしてパートナーシップの構築によって、自社が直面しているハードウェアの需要、コストのかかるトレーニング、導入に必要な人材の採用などの課題を克服して、開発を加速させることが可能になるとしている。
今回のランキング4位には、新興市場での新たなサプライチェーンを確立するオポチュニティが入った。サプライチェーンのデカップリングリスクは、特にハードウェア志向の企業には依然として存在しており、半導体などのサブセクターでは、地政学的な混乱を緩和する方法でサプライチェーンを再編する競争が進行中。同調査では、インドやASEAN諸国などの新興市場で事業を展開し、貿易摩擦にさらされる地域から離れた場所で事業を拡大するという新たな傾向が強く示されている。
データセンターのエネルギー効率を優先することが、今回のランキングでは8位に入っている。LLMのトレーニングやインテリジェントシステムの実行に膨大な処理能力が必要とされることから、データセンターのエネルギー使用量が急速に増加することが予想されるとのこと。実際、同調査は、2027年までにAIがオランダ一国と同じ量の電力を消費する可能性があることを強調しており、企業がエネルギー機器メーカーと協力して、データセンターに電力を供給する方法を開発し、短期的にも長期的にもコストを削減することを提案しているという。