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言語化できない「インサイト」を発見するヒント

第10回

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 これまでの連載では、デザイン思考の全体像と、デザイン思考を活用する前に必要な事前準備について説明した。課題設定と課題解決に必要な知識の整理だ。今回は、知識の1つとして欠かせない「ユーザーのニーズ」に焦点を当てる。具体的には「ユーザーが言語化できないニーズ:インサイト」をトピックとして扱い、インサイト発見に有益なエクストリーム・ユーザーについて紹介したい。

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「誤った常識」を破壊する事実がイノベーションのヒント

 なぜ現場に行くと、イノベーションのヒントが見つかるのだろうか?それは、組織や個人が持つ「常識」を破壊する事実に直面できるからだ。常識は「ニーズに対する誤解」から生まれる。ユーザーを直視してニーズを適切に把握することで、誤った方向から適切な方向へ向かうことができる。

常識の形成図表1:常識の形成

 たとえば、ある旅行代理店の関係者が新しいサービスを生み出そうと考えた時のことだ。会議室でのテーマはこうだ。「ネットで気軽に旅券が買える時代において、実店舗にどのような価値があるのか?」

 会議室での結論としては、「行きたい場所を決められない人が、知識が豊富な店員からアドバイスを求めに訪れている」となった。この結論は、その場にいた5名ほどの関係者にとって自然に感じられる、いわば「関係者の常識」であった。では、実際のユーザーにはどのようなニーズがあったのだろうか。

 会議室から足を伸ばし店舗に訪れているユーザーにインタビューをすると、想定していたニーズとは全く違う声が聞こえてきた。来店の理由にあげられたのは、「インターネットでクレジットカード決済を行うのが不安」「ネットの手続きはよくわからないので店舗に来た」というものだった。

 関係者は「ネットは便利だ。便利なネットでは提供できない価値が店舗にはある」と考えた。ユーザーのニーズは「付加価値」であると誤認していた。しかし実際は、ユーザーは「ネットは不便。ネットが不便なので店舗に来ている」と考えていた。付加ではなく「補完」価値がニーズだ。

 もし「ユーザーは、店舗が持つ独自の価値を求めている」という誤解を前提にサービスを構築していたら、どうなっていただろうか。もしかしたら「新しい旅先を懇切丁寧に提案する」といったコンシェルジュサービスが誕生していたかもしれない。

 しかし、ネット上の旅券購入に不安を感じて訪問するユーザーが多いのであれば、「魅力的な旅先(what:コンテンツ)」の提案ではなく、「堅実な購買プロセス(how:手法)」を提案することが、ユーザーにとって価値の高い選択肢となる。

 このように、「ニーズを適切にとらえること」が現場の調査では重要である。しかし、実際のところは調査が形だけのものになってしまう場合が往々にしてある。理由の1つに、ニーズの種類を整理できていないことが挙げられる。

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なぜ「ユーザーの声」は当てにならないのか?

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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