MM総研は、企業1599社を対象にWebアンケート調査を実施し、2024年3月時点のRPA(Robotic Process Automation)の利用状況をまとめた「RPA国内利活用動向調査2024」を発表した。
中小企業のRPA導入率が15%と着実に成長
年商50億円未満の中小企業では社数ベースの導入率が15%となり、前年から3ポイント増加した。導入率は右肩上がりで伸びており、準備中・検討中とする企業も23%あることから、今後も成長が続くと見られる。
RPA未検討の中小企業は62%と半数以上を占める。利用しない主な理由として「どういうことができるかわからない」が28%、「効果を期待できない、費用対効果がわからない」が27%、「今の従業員体制で業務を十分こなせている」が24%などを挙げた。RPAに対する理解が進んでいない面もあり、より具体的でわかりやすい効果や用途を示す必要があるという。
導入率だけを見ると、中小企業も普及期に入ろうとしているが、上述のような理由から、中堅・大手企業のような急成長ではなく、年間数ポイントずつの着実な成長が予想されると同社は述べている。
中小企業向けシェア1位は、「マクロマン」と「Microsoft Power Automate」
中小企業におけるRPAベンダーシェアは、1位がコク―の「マクロマン」とマイクロソフトの「Microsoft Power Automate」で、同率の18%だった。マクロマンは無料ツールで、RPA人材の派遣や教育・サポートを有償化するビジネスモデルでシェアを伸ばしている。Microsoft Power Automateは、Microsoft365のシェア拡大に合わせて導入が進んだ。
次いで3位は、FCEプロセス&テクノロジーの「Robo-Pat DX」で16%となった。専門用語を極力排除し、使いやすさにこだわったUI、無償の伴走サポートなどが導入ハードルを下げている。4位はユーザックシステムの「Auto名人シリーズ」で14%だった。ディヴォートソリューションの「アシロボ」や、キーエンスの「RKシリーズ」なども類似したアプローチでシェアを伸ばしている。
各ツールのシェアは僅差で、ツールも乱立している状況である。前回調査(2022年9月)では、NTTアドバンステクノロジの「WinActor」などRPA黎明期から知られるツール群がランクインしていたが、中小企業向けにサポートやUIなどを改善したベンダーにシェアを奪われている。
中堅・大手企業では、部門への浸透率が向上
年商50億円以上の中堅・大手企業では、導入率は44%と前回調査から1ポイント減となり、伸び悩んだ。2021年度に40%超えとなって以降、横ばいが続いており、利用検討企業も18%と大きく変わっていない。
一方で、RPA導入企業における浸透度合いを測るため、部門浸透率を見ると、43%と前回調査よりも6ポイント伸びた。この1年半で利用部門を広げていることがわかる。
利用部門として最も多いのは、情報システム部門の47%で、システムの運用効率化などで利用されている。2位は営業・販売部門、3位は財務・経理部門と続いた。
なお、中小企業で最も利用されているのは営業・販売部門で50%となった。システム化されてない領域が多く効果が出やすいため、効率化することで売り上げ拡大を図るといった狙いがある。
その他の部門でも利用は進むが、バックオフィスは業務に特化したSaaSやパッケージが充実しているため、中小企業ではRPAを活用するほど大きな業務の塊にならず、人材も限られるため、中堅・大手ほど利用部門が広がっていない。
中堅・大手企業向けシェアは、Microsoft Power Automateが初めて首位に
ベンダーシェアはMicrosoft Power Automateが24%(前回調査から2ポイント増)で、調査開始以降初めて1位となった。Microsoft365のライセンス有効活用で既存のRPAからのスイッチも進んでいる。首位を獲得し続けていたWinActorは21%(5ポイント減)で2位に順位を落とした。3位は米UiPathの「UiPath」で16%(同5ポイント減)となった。
前回調査と比較すると、全体として複数利用していたツールを減らし、集約する動きが見られる。一方で、足元では中小企業向けのRPAが大手企業の各拠点や各課など企業よりも小さな単位でターゲティングし、導入され始めている。そのため今後は再び分散する形で、中堅・大手企業のRPAの浸透率が上がるだろうと同社は述べている。
中堅・大手企業では「生成AI×RPA」に期待が集まる
中堅・大手企業では、半数以上の企業がRPAなどのあらゆるツールを利用して、全社レベルの自動化を実現しようとしている。その一環として、RPA導入企業の間で生成AIとRPAを組み合わせ、さらに自動化する範囲を広げる動きがある。
本格的に活用済みの企業は10%とまだ少ないが、お試し段階のテスト・部分的に活用済みは21%、準備中・検討中は53%と期待は大きいようだ。ツールベンダー側も機能拡充やユースケースを示すなど、取り組みを強化している。
全社レベルでの自動化を実現するにあたり、約7割の企業が外部ベンダーによる支援が必要ということがわかった。支援してほしい内容は前回調査と異なり、「適切なデジタル技術やソリューションの提案」が1位となった。生成AIをはじめ、技術進化のスピードが速く、企業側も追いつくための支援を求めるようになっている。
なお、AI×RPAはRPAブームが起きた2018年ごろからあるコンセプトで、AIチャットボットと組み合わせてコールセンターを効率化するといったソリューションもあった。しかし、AI構築・運用のハードルも高く、実態としては紙書類をデジタル化するためにAIを活用した光学文字認識(AI-OCR)を組み合わせることが主流だった。
今回の生成AIは、多くの製品がクラウドベースで企業も手軽に利用できるため、全社レベルでのプロセス改善、顧客接点の自動化などを進める生成AIブームが来ているという。
調査概要
- 調査対象・件数:国内企業1599社
- 調査方法:Webアンケート
- 調査期間:2024年3月18~22日