「修羅場」での経営人材の育成には、当事者の「ケア」もセットで
セッションの最後に、モデレータの日置氏は「修羅場」についての登壇者の意見を求めた。経営人材の育成では、ハードなコミットが求められる修羅場の経験がしばしば必要とされる。その一方で、人的資本経営の実践においては、社員の心理的安全性の確保などが強調される。この両者の関係性について日置氏は尋ねた。

「私自身は修羅場が好きではないですが、事業再生を担当していたこともあり、修羅場的な仕事に従事した経験はあります。その経験から言わせてもらえば、その仕事に臨む当事者にWillがあるかどうかが重要だと思います。何らかの目標に向けて目の前の仕事をやり抜く意思があれば、仮に修羅場的な現場にアサインされたとしても、大変な思いはするものの、大きな成長を達成して帰ってきてくれるはずです。その一方で、修羅場的な現場が得意ではないという人材も確実に存在するため、その点には見極めが必要だとも思っています」(鈴木氏)
さらに、鈴木氏は修羅場の経験には、組織や仲間からの「ケア」が不可欠だと強調した。無責任に単身で修羅場に送り込むのではなく、頻繁なコミュニケーションや組織的なフォローアップなど、当事者のケアもセットで行うのが欠かせないのだという。
続いて、佐藤氏も修羅場の必要性や効果は一定認めつつも、それ以上に「楽しみながらやる」ことの重要性を説き、セッションの最後を締めくくった。
「事業家思考と投資家思考を両立すれば、世の中の見え方は大きく変わります。例えば、以前は聞き流していたようなニュースから、深い示唆を得たり、先を見通したりすることもできるはずです。そうした変化を体感できるのは、何より楽しいことではないでしょうか。日本企業には、市場環境の最新動向などに触れると、やばいとか、もっと頑張らなきゃと、ただただ切迫感だけを持つ方が多いように思います。それは悪いことではないのですが、それでは肩に力が入ってしまい、変化こそチャンスなんだと捉えることができません。さらには、漠然とした危機感が募るだけで、新たな知識やスキルの習得に及び腰になってしまうこともあるのではないでしょうか。だからこそ、楽しみながらやることが大切です。自分の成長に喜びを感じ、また周囲の成長を褒め称えながら、楽しく組織や自らを変革していくことを、私からはおすすめしたいと思います」(佐藤氏)
