「行為のデザイン」はユーザーの時間軸から考える
行為のデザインは、ユーザーが目的を達するための複数の行動に着目するが、そのときに欠かせない視点は「ユーザーの時間軸」である。止まっていようと動いていようと、人の行為には必ず時間がともなう。なぜなら、行為のその先には目的があり、目的を果たすために私たちはさまざまな手段を講じるからだ。その一連の流れをひとつひとつ吟味すると、あるべきプロダクトの姿が見えてくる。
このことの重要性に気付いたのは、ある企業の開発プロジェクトに参加したときだった。販売中のプロダクトに改善を施したいという要請だ。さっそく参考のために、ユーザーがプロダクトを使っている場面を見に行ったところ、私は驚いた。そのプロダクトは必ず自分の体のサイズに合わせて設定を変えなければ、本来の性能を発揮しないものなのに、合わせているユーザーがほとんどいなかったからである。しかも、そのことを企業の担当者は「取扱説明書に明記してあるから大丈夫です」と気に留めていなかった。