経費精算業務の効率化とガバナンス強化を目的に
組織横断的タスクフォースを編成してConcurを導入
もとは小売・流通向けクレジットカードを展開、事業領域を広げてきた「株式会社クレディセゾン」。年会費無料化や日本初のサインレス取引など、従来とは異なる発想で先駆的な取り組みを成功させ、着実な成長を遂げ、現在、同社の持つUCブランドによる法人領域へのクレジット決済拡大に向けて取り組んでいる。
そんな同社もかつて経費精算業務では、毎週末に各部署で紙ベースの明細書を作成し、財務経理部まで現金を受け取りに並んでいたという。「ずらりと部署前に並ぶのは、週末の恒例行事のようなものでした。誰もが非効率な作業に慣れてしまっていたのです」と株式会社クレディセゾン 財務経理部 課長の鈴木寿則氏は振り返る。約10年前に振込式になったものの、各部署担当者の手作業は変わらず、むしろ部分的な業務・システム改善によってルールや対応が複雑化し、煩雑で非効率なものになっていた。
「改めて調査を行ったところ、毎月、各部門の経理担当者が3日間、財務経理部門の担当者3人が9日間を精算作業に充てていたことが明らかになりました。さらに上長のチェックが複数回に渡るなど複雑で、不在や判断保留などによる手間や負担も明らかになりました。結果、煩雑さ故に確認不足や手抜きが生まれ、ガバナンスにも問題が生じていることが判明したのです」(鈴木氏)
そこで2013年10月頃から経費精算業務の見直しを図るため、部門横断的なタスクフォースを結成。人事、総務、経理、システム、営業推進などの主要部門から担当者を集め、従来方式の課題の洗い出しを行った。これで判明した課題が、経費精算手続きの多さだった。経費によっては少額でも複数の部門承認が必要となり、時間も手間もかかっている。業務多忙となれば上司は充分なチェックをせずに承認をすることもあった。 これでは意味がない。経費を正確に把握している現場で経費管理の効率化を発揮できるようにしなければ本当のガバナンス強化には繋がらないことが見えてきた。 そして、それはConcur導入によって改善できることがわかった。 同年末にConcur導入稟議が決裁されると、全社に向けて新システムへの移行を宣言。導入に先立ち、40数部門を、7部門ごとに25名ほどを集めた1日研修を6回開催することで、ほぼ全部門の担当者がConcurの使い方を修得し、各々の部門スタッフへと浸透させていった。
「全社展開後の2〜3ヶ月間で寄せられた問い合わせの多くは、承認者設定等の初期設定に関するもの、勘定項目など会計に関するものでした。その後はConcurの操作についてはほとんどなかったですね。これまで各部門の経費精算担当者が事務を全て行っていましたが、Concurでは自分自身で精算手続きを行うために『自分でやるのか』という若干の戸惑いがあったようですが、それでも1回経験すればすぐに慣れて、むしろ管理運用の負荷が低減されたことを歓迎する声が多く聞かれました」(鈴木氏)
全社でのコスト削減効果は数千万円を見込む
煩雑さの解消による“見えないコスト”削減も高く評価
株式会社クレディセゾン
財務経理部 課長
鈴木寿則氏
Concurの導入前は各部門の経費精算担当者が精算事務を全て行っていましたが、Concur導入によって、各スタッフが自ら経費申請を行い、財務経理部門が取りまとめて精算するフローに変更しました。このことで、各部門の経費精算担当者の負担が軽減されると共に、営業スタッフは経費精算のために外出先からわざわざ会社に戻ることなく、スマートフォンやタブレット端末を使って移動中でも経費精算が可能となり、経費精算の方法は激変しました。
「小さなことのようですが、それが積算すれば大きな効果につながります。試算では 年間数千万円のコスト削減効果があるのではないかと見込んでいます」(鈴木氏)
Concurの効果は、単なる入力の分散化・迅速化だけでなく、システム化・自動化によるものが大きい。たとえばセキュリティを担保することで、各自のパソコンだけでなく、外出の多い営業スタッフは支給されたタブレット端末や私物のモバイルからも入力できるようになった。また、海外出張などでの経費は使用時の為替レートが自動的に適用され、入力ミスや上限を知らせるアラート機能なども充実している。いちいち調べたり、調べて指摘したり、果ては不承認の理由を説明したり……、そうした煩雑さや不透明性が排除され、シンプルな経費利用・清算が可能になったというわけだ。
「申請の遅れや間違い、不承認などがあると、以前は財務経理部の担当者が当人に連絡していましたが、時に曖昧さゆえの心理的な軋轢を生じることもありました。今は設定に基づき機械的に判断され、自動的にアラートメールが送信されるので、お互いに精神的な負担が軽くなりました。こうした“目に見えない効果”についてもConcur導入の意味は大きいと感じています」(鈴木氏)
さらには、システムが変わることで業務自体が見直され、新たな改革のきっかけにもなっているという。たとえば、登録時の自動監査機能でガバナンスを強化したことを受けての、決裁業務や承認プロセスの簡略化もその一つだ。画面と原本との突き合わせを行うなど、一部の手作業を残すものの、大幅なスピードアップにつながった。
コーポレートカードと連携でいっそうの合理化を推進
「攻め」のデータ活用へと駒を進め、外部提案も視野に入れる
そしてもう1つ、Concur導入による効率化に大きく貢献したのは、カードデータとの連携だ。ひとつめは交通系ICカードだ。少額ながら複雑で細かい交通費も、リーダーで読み取ることで、改めて調べたりすることなくデータで直接取り込むことができる。また、クレディセゾンでは、2006年当時、外資系クレジットカードしかConcurにデータ連携ができなかった中で、いち早くからコンカーソリューションとのデータ連携を開始、2012年にCONCURが日本に現地法人を設立した際にも、早々にアライアンスを組んでコーポレートカードとConcurとのデータ連携を武器に両社にて営業拡販を進めた。それに合わせて、同社はユーザーとしても導入したわけだ。
「Concur導入と同時期に、役員クラスのみに限定されていたコーポレートカード を課長以上の役職者および出張等の経費立替が多い社員に配布して、業務経費のデータをシームレスに取り込めるようにしました。初めは『使いすぎるのではないか』などの懸念の声もありましたが、改ざん不可で透明性も担保されることもあって、むしろ社員の経費に対するガバナンス意識は向上したように思います」(鈴木氏)
Concur×コーポレートカードの連携で1年間運用し、全体の30%がコーポレートカード利用、70%が交通系カードによるものだったという。つまり、ほぼ大部分で直接的なデータ連携が可能になったことになる。
「コーポレートカードとの連携によって、入力作業の軽減に加え、社員の立替払いによる一時的な自己負担が少なくなるなど、利便性を評価する社員は多いですね。さらに財務経理部としては直接取り込んだデータに対する監査が自動的に行えるようになり、管理負担が小さくなったことを高く評価しています」(鈴木氏)
さらに交通費や諸経費がシステムごとに分断されていたものがConcurに集約され、量も蓄積されてきたことで、データの分析・活用を試行しているという。Concurに搭載されているBIレポートツールには多くの標準レポートが提供されており、経費の使われ方について容易に可視化できる。
「たとえば、接待費から異なる部署で同じ取引先にアプローチしていたり、経費を使う人と売上げの関係性に法則性があったり、分析によって経費の使い方や効果も見えてくるでしょう。まだ仕懸かったばかりですが、今後は当社をラボとして様々な分析・解析を行い、Concur×コーポレートカードの知見やノウハウとして提供していきたいと考えています」(鈴木氏)
また、現在、コンカーソリューションでは BtoEに限定されているが、米国では企業として公共料金やWebリスティング広告などの決済を可能にするBtoBにも対応しており、今後、日本でもローカライズされる予定だ。クレディセゾンにはBtoB決済専用のパーチェシングカードも発行しており、今後、両社にて更なるビジネス展開を推進していく予定だ。