「戦略投資」のための計画立案法、意思決定法
さて、読者の皆さんは、「戦略投資の意思決定」というこの連載のテーマから、どのような場面を思い浮かべるでしょうか。役員会議室でプレゼンテーションが行われて、経営陣によって意思決定が下されるなどの場面もあります。しかし、役員会議室に至る前には、事業計画を課長に説明しては修正し、部長に説明しては修正し、関係部門に説明しては修正し、というかなり長い道のりがあります。つまり、役員会議室に行く前のプロセスが、実際には勝負どころとなります。
このようなプロセスを勝ち抜くためには、戦略投資の成功条件を明確にするため、計画立案の方法論を学ぶことが重要です。この連載では、新規事業や製品開発の方法論として、ペンシルバニア大学ウォートンスクールのイアン・マクミラン教授とコロンビアビジネススクールのリタ・マグラス教授によって考案された計画法、「Discovery-Driven Planning(仮説指向計画法)」を紹介します。
しかし、どのような計画であっても、未来の数字は事実ではありません。その数字は誰かが(あなたもとめて)作っているわけで、不確実です。明日の天気予報でも外れますから、3年から5年、あるいはそれ以上の期間の計画になると、すべてが計画通りになることはまずありません。そこで、不確実な状況下での意思決定の問題が生じます。この連載では、不確実性下の意思決定の方法論として、スタンフォード大学のロン・ハワード教授によって考案された意思決定手法、「Strategic Decision Management(戦略意思決定法)」を紹介します。
仮説指向計画法も戦略意思決定法も優れた方法論ですが、立案者個人のスキルにとどまっている場合には、大きな効果を発揮しません。なぜならば、戦略投資の意思決定は企業内の多くの関係者を巻き込む組織的な取り組みだからです。そこで、方法論に入る前に、次回は組織として戦略投資の意思決定に取り組む事例を紹介し、企業内の仕組み作りについて考えてみたいと思います。