事業ポートフォリオの全体最適は
「個別投資の代替案」の組み合わせ
続いて、戦略投資A・B・Cのそれぞれに戦略代替案を求めたとしましょう。その結果,以下のような案が提出されました。どの案も、実現可能なものとして、実行部隊がよく練ってきたとします。
投資額 | リターン見込み | ||
---|---|---|---|
戦略投資Aの計画 | 松 | 100億円 | 130億円 |
竹 | 70億円 | 100億円 | |
梅 | 40億円 | 60億円 |
投資額 | リターン見込み | ||
---|---|---|---|
戦略投資Bの計画 | 松 | 100億円 | 130億円 |
竹 | 70億円 | 100億円 | |
梅 | 40億円 | 60億円 |
投資額 | リターン見込み | ||
---|---|---|---|
戦略投資Cの計画 | 松 | 100億円 | 130億円 |
竹 | 70億円 | 100億円 | |
梅 | 40億円 | 60億円 |
投資額を合計120億円以内に収めて,なおかつ全体最適が達成できるかどうか、考えてみましょう。組み合わせを考えると、理論的には、Aに3通り、Bに3通り、Cに3通りありますので、3×3×3で27通りあります。それぞれに、実行しない、という選択肢も含めると、4×4×4の64通りが可能です。このような組み合わせで作られる数々のポートフォリオの中で、ベストな組み合わせを見つけ出すのが「ポートフォリオの最適化」です。皆さんなら、どのように考えるでしょうか。
ここでは、投資の「生産性」がキーワードです。投資効率も同じ意味です。
一般的に生産性とは、「(アウトプット)÷(インプット)」です。戦略投資の評価では、「(リターン見込み)÷(投資額)」となります。
戦略投資の「生産性」を考慮すると、次のような組み合わせが選択できます。3つの案の合計投資額に対して、最も投資効率が高くなる(投資額に対するリターン見込みの比率が高くなる)ように選択した組み合わせです。投資額は合計120億円、リターン見込みは合計220億円です。当初は、AとCを選択して、170億円のリターン見込みでしたから、50億円高い見込みとなりました。各投資の生産性を考慮して、経営資源を再配分したこの状態を「全体最適」といいます。
投資額 | リターン見込み | 生産性 | ||
---|---|---|---|---|
戦略投資Aの計画 | 梅 | 40億円 | 60億円 | 1.5 |
戦略投資Bの計画 | 竹 | 30億円 | 50億円 | 1.67 |
戦略投資Cの計画 | 松 | 50億円 | 110億円 | 2.2 |
この組み合わせでは、戦略投資Aについては当初の「竹」案よりも投資規模を縮小した「梅」案が選択されています。戦略投資Bは投資規模が中間の案、戦略投資Cについては投資規模を拡大した案が選択されています。このように、全体最適の状態においては、各事業の個別最適の状態とは異なることがあります。
この組み合わせは、投資とリターンの関係だけに着目していますので、いつ頃成果が得られそうか、ヒト・モノ・カネは必要なタイミングで配分可能かなどの「時間軸」も考慮することが実際は重要です。