トヨタにおけるAI活動の課題は「安全性向上」と「高齢者アクセス」
自動車にとって、まず「安全性」は絶対不可欠な要素であることは間違いない。しかしながら、現実には全世界での交通事故死亡者は年間約125万人、米国では3万人、日本では5000人以上にも上る。これは戦争による死者数と変わらぬ規模であり、まさに現代は「交通戦争」のただ中にいるともいえるだろう。
とはいえ、自動車は「安全性の低い乗り物」というわけではない。事故による死者は10億kmあたり7人という確率からいえば、決して安全性は低くはない。それでも世界規模でみれば、無視できない数字となってしまうのだ。そんな安全性を追求し、限りなく「事故を起こさないクルマづくり」をミッションとしたとき、それは大変レベルの高いものとなることは間違いない。
そもそもトヨタは年1000万台の車を生産し、使用年数は10年。つまり1億台のトヨタ車が道を走っており、各車が年間1万kmも走行することを鑑みると、トヨタ車は年1兆kmも走行している計算になる。その膨大な利用の中でも事故が数件生じるだけで大きなリコールとなり、時に企業の信頼を、そして売上げを大きく損ねる可能性がある。「安全性の追求」は、トヨタにとっては決して諦められない究極の目標というわけだ。
そしてもう1つ、プラット氏が課題として掲げるのが「高齢者のアクセス」である。米国はもちろん、日本でも急速に高齢化が進んでいる。そうした高齢者が何かに「アクセス」する、つまり、屋内外いずれでも「どこかに移動すること」が難しくなり、不便を感じることが増えてくる。ここにTRIとして、特に屋内での「Collaborative Autonomy(協調的自律制御)」、つまり「ロボット活用」によって貢献することを考えているという。