ビジネスポリシーとビジネスルールの定義
次に、ビジネスポリシーとビジネスルールの定義をしていきましょう(図3)。
前者が抽象的な表現にとどまる場合が多いのに対して、ビジネスルールは具体的に実行可能なものでなければなりません。具体的にいえば、ビジネス経験が少ない新人社員、場合によってはコンピューターでも理解可能なものが正しいビジネスルールです。保険会社において、「お客さまからの適切な請求に対しては、適切な保険金を適切な期間内に支払わなければならない」は、ビジネスポリシーであったとしてもビジネスルールではありません。具体的ではないからです。
この意味合いでいえば、冒頭のウォーレン・バフェットのルールは、ルールとは言えそうもありません。誰でも実行できるのであれば皆大金持ちになってしまいますよね。これは、ウォーレン・バフェット特有のジョークの1つとして捉えるべきです。
大企業になりますと、ビジネスポリシーは階層構造を形成し、上位のものほど抽象的/下位のものほど具体的な表現となる傾向にあります。これを私は、「ポリシーピラミッド」と呼ぶことにしています(図4)。
一方、ビジネスルールは、大きく分けて制約とガイドライン、推論と計算、アクションイネーブラという5つのタイプに分けることができます(図5)。
制約とガイドラインは、ビジネスの構造や行動を制限する役割を果たします。前述の保険会社でいえば、「ニコニコ保険の被保険者は、20歳以上60歳未満でなければならない」は、商品に関する制約ルールです。ガイドラインは、いくぶん制限が緩やかなものとして考えればよいでしょう。つまり、制約とガイドラインの違いは、MustとShouldの違いとほぼ同じです。
一方、推論と計算は最終的な判断や行動の前に生成される中間情報のようなものです。同じく保険会社でいえば、「被保険者の血圧上限値が150以上であれば、リスクが高い」というルールは推論ルールといえます。BMI(肥満度指数)のような計算も、ルールの一種です。
最後のアクションイネーブラは、実際の行動を促すためのルールです。たとえば、「被保険者の総合評点が100点超であれば、申込を承認する」のようなルールを指します。