本実験では、NTTサービスエボリューション研究所(NTT研究所)の移動状況推定技術を用いたAIにより、ドライブレコーダーなどで記録される、時系列のマルチモーダルデータを分析することで、飛び出してくる自転車などとの接触事故となりかねない危険を、約85%の精度で自動検出することに成功した。警察庁交通局『平成27年における交通事故の発生状況』データによると、「出会い頭衝突」は交通事故の発生状況のうち約24%を占めている。なお、このAIは、NTTグループのAI技術、「corevo(コレボ)」を構成する技術のひとつだ。
1. 背景
NCSは、カーリースを契約している企業の顧客に、安全運転促進のための自動車IoTツールとして「NCSドライブドクター」を提供している。このサービスのオプションである「NCS交通安全プログラム」の映像解析サービスでは、車載器に記録された膨大な映像データの中から、「交通違反」「ヒヤリ・ハット」などの危険運転シーンを抽出し分類する作業を行っている。
NTT Comは、2015年より時系列ディープラーニング技術を活用したAIの映像解析への活用に取り組んでおり、不審動作・不審者検知実験や不審者追跡実験などを行ってきたが、これらの成果とNTT研究所のAI技術である移動状況推定技術を活用することで、映像や速度などマルチモーダルで時系列なデータから、危険運転を自動で判別し、人が実施する作業をより早く・正確に実施できると考え、両社で実験を開始した。
2. 実験の概要
本実験では、「危険運転の対象を自転車などが車両の前面に飛び出してきて、車両と接触しそうになるシーン」を「ヒヤリ・ハットトシーン」と設定し、以下の実験手順を進め、9,000件のデータに対して約85%の確率でヒヤリ・ハットシーンの検出に成功した。
- 「NCSドライブドクター」から映像データ、各種センサーデータ(3軸加速度センサー情報、速度情報等)といった時系列なマルチモーダルデータを抽出
- 抽出したデータから時系列なマルチモーダルデータをディープラーニングに基づき分析する移動状況推定技術を用いて、ヒヤリ・ハット判定モデルを生成
- 生成モデルを用いて、ヒヤリ・ハットシーンが含まれるドライブレコーダーデータを自動検出
3. 今後の展開
NTT Comは、本実験で得た時系列なマルチモーダルデータをAI技術により分析する知見を、映像分析の共通プラットフォームや各種IoTソリューションなどへ広く提供する予定だ。また、NCSは、今回対象とした接触事故につながる運転以外にも一時停止不履行や信号無視など法令違反も含めた危険運転データや地域性、時間帯、車種など個別の状況を踏まえた様々なケースの分析を行っており、これらのインシデントを自動検出するために、AIによる自動分析の高度化を検討していく。
両社は、危険運転自動抽出実験で得られた成果をさらに進化させ、交通事故削減ソリューションのサービスの一層の向上を目指すとともに、映像およびセンサー情報のビックデータとAI技術を活用した新たなビジネスの可能性についても、検討を進めいくとしている。