「旧来型雇用の終わり」と「クラウドベース資本主義の始まり」
現代ではインターフェースからものの貸し借りにいたるまで、あらゆる物事が「資産を持たない(アセットライト)世代」の始まりを告げるかのような形で再検討されている。
──『シェアリングエコノミー 』P8
『シェアリングエコノミー 』
2016年11月に出版された、アルン・スンドララジャン氏の著書『シェアリングエコノミー 』(門脇弘典訳、日経BP)は、従来の資本主義社会によって生み出された「資産を多く持つ(アセットヘビー)世代」から、「アセットライト世代」の到来を予期させる経済的・社会的な変化がまとめられている。そのキーになるのが「シェアリングエコノミー」だ。
日本は非常に、重要な過渡期に来ていると思います。私がこれから話す「シェアリングエコノミー」は、ただただ通過するトレンドだとは考えていません。
「シェア経済サミット」基調講演の冒頭で、アルン氏はこのように聴衆へ語った。現在のシェアリングエコノミーの筆頭ともいえるサービスであり、自宅の空き部屋を自由に値付けして提供できる『Airbnb』は、日本にも「民泊」という言葉と共に語られ、法整備を進めざるを得ないほどの広まりを見せ始めている。
しかしながら、実はシェアリングエコノミーに「近しいこと」は日常的に行われてきたことだ。私たちは友人を招いて食事をふるまったり、クルマで駅まで送っていったり、家に泊めたり、お金を貸したりもする。これまでパーソナルに行ってきたこれらのことが、対象範囲を拡大し、プラットフォームや金銭を介して提供されるようになったわけである。
では、シェアリングエコノミーで起きる変化とは何だろうか? アルン氏は著書のサブタイトルを引き、「雇用の終わりと、クラウドベース資本主義の台頭」と論じた。つまり、企業によって提供されているコトやモノが、今後は「大衆=クラウド」に置き換わり、資本主義の中心として機能し始めるという。
動画はテレビからYouTubeへ、投資は銀行からクラウドファンディングへ、レンタカーは企業サービスからカーシェアリングへ……あらゆる業界で「大衆」が中心となっている事例が増えてきている。アルン氏はエネルギー業界についても近い将来に変化が起きると見ており、「個人が所有するソーラーパネルで発電した電力を貯蔵し、近隣の人に送電したりバッテリーとして供給したりする」といったような未来があり得ると話す。
個人がプラットフォームを通じて直接的にモノ、コト、サービスを提供するようになる世界では、「パーソナル」と「プロフェッショナル」の境界、「市場」と「企業」の役割も曖昧になっていく。従来では説明のつかないビジネスモデル、そしてワークスタイルが構築されていくのだ。