始まりは「ソニーはもっと新しいことができるのではないか」という思い
小林(株式会社biotope Creative Catalyst / Intrapreneurship Enabler):
新規事業である「Life Space UX」を手掛けるTS事業準備室に所属する前は、どのような部署でどんな業務を担当されていましたか?
斉藤(ソニー株式会社 TS事業準備室 室長):
ソニーに入ったのが94年で、途中シンガポールで3年ほど営業の仕事をしたのを除くと、ずっと“商品企画畑”を歩いてきました。製品カテゴリーとしては「カメラ」が一番長く、その後「PlayStation®」を担当した後に、今の部署に配属となりました。
小林:
どのような経緯でTS事業準備室に参加されたのでしょうか?
斉藤:
当時、今後もソニーが成長を続けていくためには、遊び心があるプロダクトやサービスをもっと積極的に出していこうという動きがあったんですね。既存のビジネスから離れて「全く新しいプロダクト」にチャレンジできる組織として、社長の平井直轄で作られたのがTS事業準備室です。
小林:
新組織であるTS事業推進室に呼ばれたときは、斉藤さん個人としてはどのようなことを感じていましたか?
斉藤:
ちょうどPlayStation®4の立ち上げの年だったので最初は迷ったのですが、すぐに火が付きました。私自身が会社に対して“憤りも多少含んだ熱い感情”を持っていたので、「よっしゃ、やったるか!」とアドレナリンが出ちゃった感じでしたね。
小林:
どんなことに憤りを感じ、熱い思いをお持ちだったのでしょうか。
斉藤:
それなりにキャリアも積んでいて、社内にネットワークがあったので、様々な年代やポジションの人から「こんな新しいことやりたいんだよね」といったアイデアや思いを聞く機会が多くあったんです。そういう“マグマみたいなものが沸々としている状態”だったんですけど、当時は、会社としては挑戦する姿勢が弱まっていて、辞めて他の会社に行ってしまう人もいました。
自身の心の中でも「会社への思い」と「危機感」が交錯するような心理状態で、社長の近くで働いている社内の知り合いのところへ、怒鳴り込んだことはありました。
「今は言えないけれど考えていることがあるから少し待ってくれ」と言われ、“かわされた”ような感覚も残りながら、変化し始める兆候に期待しつつ「じゃあちょっと様子を見ようか」と、冷静になるよう自分に言い聞かせました。