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経営変革の「思想」と「実装」

宇田川准教授が語る、企業変革の4つのプロセス──経営の自立とは他者からの支援という依存先を増やすこと

【第1回・後編】ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 野本周作氏

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 新刊『企業変革のジレンマ──「構造的無能化」はなぜ起きるのか』を上梓した埼玉大学の宇田川元一准教授と、経営者およびコンサルタントとして長く経営に携わってきた野本周作氏(株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル)による対談。後編では、企業が自ら戦略を考え実践していける状態になることを目指す宇田川氏の理論、その中でコンサルティングファームや企業のコーポレート部門をはじめとする支援者が担う役割についての議論が展開された。

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「慢性疾患」の難しさ、それを乗り越える「正統保守主義」の考え方

──前編では、宇田川先生の新刊のテーマが経営危機のような「急性期」ではなく、ゆるやかに衰退していく「慢性疾患」状態を脱するための企業変革であること、それを阻むのが企業の「構造的無能化」のメカニズムであるということをお話いただきました。この点について、野本さんはどういう感想を持たれましたか?

野本周作氏(以下、敬称略):おっしゃる通りだなと。組織の「急性疾患」は、「このままじゃ潰れる!」という状態で時間も迫っているので大変ではあるのですが、やることさえ見えればスムーズに進みます。

 ですが「慢性疾患」というのは、変革をしなければいけない理由が見えにくい。やらなかったときに訪れるデメリットを感じにくいのが、まさに身体の慢性疾患と同じです。毎日運動しないと太ると言われても、食べたいとか飲みたいという気持ちを抑えられないのと一緒だなと。

 そういう意味では日本の企業の多くは慢性疾患だし、あえて言うなら日本全体が慢性疾患です。だからこそ、慢性疾患状態の組織の中にいる人達が心折れずにやっていくために、この本はとても重要だと思います。

宇田川元一氏(以下、敬称略):「慢性疾患」の難しさは、それに取り組む理由が見いだしにくいところにあるというのはその通りです。それに加えて、ジレンマがあるというのも難しさの要因です。

 例えば短期的な利益を求める株主と、30年、40年という長期スパンで経営を考えなければいけない経営者と、それぞれの合理性が食い違うのは当然のことです。他にも分かりやすいジレンマとして、新規事業の開発がありますね。それこそロングスパンで新しいスキルを身につけるところからやっていかなければならないのですが、短期のKPIで見るとやる理由がないことになってしまう。

 現在の発達した資本主義の中で活動する企業にとっては、このジレンマが不可避の問題なのだと、本を書き終わってから気づきました。

 社会の問題が深まるほど「自分には何もできない」という感覚を持つ人が増えて「私がやります」という人に依存したくなる。つまり独裁が生まれやすくなるわけです。企業の場合、カルロス・ゴーンのような、すごく強い力を持った人に依存するということを求めるようになってしまう。ああいうことを繰り返してはいけないと思います。

 ドラッカーはこのような危険性を1930年代に明確に認識し、自らを社会を健全に保ち、人々の自由を守る思想を持つ「正統保守主義者」であると名乗りました。まずは自分たちの現実の只中にあることを否定せず、いま手にしているものを活かして問題を解決していこうと言っているのです。今回の本で書いた変革のあり方も、これに通ずるものです。

宇田川元一
埼玉大学 経済経営系大学院 准教授 宇田川元一氏

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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