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“当たる”新規事業の法則

新規事業の成否を握る経営層の「意思決定」──大企業で意思決定を高速化する“二つの方法”

後編

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 新規事業・新商品開発で陥りがちな落とし穴とヒットブランドの法則について、イングリウッドの事例をもとに解説するシリーズ。前編では特に新商品の企画開発の際に重要な「マーケットインの徹底」について紹介しました。後編では、マーケットインの徹底を実現し、新規事業を成功へと導けるかの分かれ道とも言える「経営層の意思決定」について紹介します。イングリウッドがこれまで様々な企業の新規事業開発やマーケティングを支援する中で見えてきた、企業が新規事業を開発し黒字化させる上で大切な要素や、意思決定時に起こりがちな課題とその乗り越え方について、イングリウッドでの事例とともに解説しています。

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現代の経営では「リスクを取らないこと」が最大のリスク

 前編では、新規事業の成功確率を一定以上に引き上げるには、データ活用、経済動向の分析、プロモーション戦略の統合、クリエイティブといった要素を一体となって考えるマーケットインを徹底することが重要だとお伝えしました。しかし、これだけ綿密に企画を作りこんでも、別の要因によって新規事業を成功から遠ざけてしまう可能性があります。それこそが最終決裁を判断する経営層による意思決定の遅延です。

 市場環境の変化がますます加速する中、わずかな経営判断の遅れにより競合他社に先を越されたり、マーケットそのもののトレンドが変化してしまったりすることは、経営者の皆様の多くが経験されているのではないでしょうか。判断を先延ばしにしたり、投資を避けたりすることは一見リスクをヘッジしているように見えます。しかし、世の中の変化が激しい現代では、リスクヘッジをして変化しないことはリスクを受け入れていることと同義です。

撤退基準の明確化とデータドリブンなスキームで最速の意思決定を仕組み化

 では、新規事業参入を決定するにあたって、経営層は一般的にどのようなフローや基準をもとに意思決定をしているのでしょうか。

 たとえば「三ツ星ファーム」は、当社初の食品事業として、コロナ禍で内食需要が高まった2021年6月にサブスクリプションモデルの冷凍お弁当事業として立ち上がりました。

 今でこそ「三ツ星ファーム」は、累計販売食数2,000万食を突破するなど順調に販売数を伸ばし、イングリウッドの新規事業の成功、そして冷凍宅食サービスの成功のモデルケースとして食品業界からも問い合せも多くいただくほどになっています。

 しかし、実は新規事業として立ち上げた当初は社内でも大多数が反対でした。

 食品事業は、大手企業もベンチャー企業も競合が非常に強いマーケットであり、かつ当時のイングリウッドにおける主力事業と比較すると利益率が高くないという懸念が挙がっていました。そもそも食品事業の門外漢であるベンチャー企業に対して、製造工場から門前払いを受けるようなスタートでした。それでも我々のマーケティングでは、共働き層を中心に「少し高くても美味しくて体に良い手軽な日常食」というユーザーニーズに応えたいというビジョンで事業を推進しました。

 このように 多かれ少なかれ新規事業を始める際には、ユーザーニーズと参入ハードルというジレンマを抱えて参入に二の足を踏むというケースも多いと感じます。これらを解消するために、イングリウッドでは新規事業を始める際は明確なKPIを設定し、クリアしなければ即撤退、クリアすれば次の投資を行うということを徹底しています。

 「三ツ星ファーム」の場合は、食品事業の競合の強さや、他事業と比較した利益率など、リスクを取ってまで事業立ち上げすべきではない(≒リスクを取らない)理由はいくらでもありましたが、定量・定性分析による事業成長見込みの高さと、KPI(≒撤退基準)の明確化の2点から、リスクを取ってでも挑戦するという意思決定に踏み切ったのです。その後定めたKPIを順調にクリアしたことで、資金調達をほとんどしていないベンチャー企業でありながら事業開始1年目でTVCM出稿を行うなどの積極投資にも踏み切り、当初の想定を大きく上回るような事業成長につながりました。

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この記事の著者

三好 悠介(ミヨシ ユウスケ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

野仲 正樹(ノナカ マサキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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