公的な個人認証手段を持たないために、文化、政治、経済などの社会生活に参加できていない人々は、世界人口のおよそ6分の1と推定されている。教育、医療、選挙、銀行、モバイルコミュニケーション、住宅、福利厚生や介護保障などにおいて、公的な個人認証は社会活動に参加し、サービスを受けるために必要不可欠だ。ID2020は、安全で確立されたシステムの活用により、包括的なテクノロジーを採用したデジタル認証の実現を目標としている。
アクセンチュアは、マイクロソフト社およびアバナード社とのパートナーシップのもと、ブロックチェーン技術に基づく認証システムのプロトタイプを開発した。このデータベースシステムの採用により、極めて高い秘匿性と安全性を確保しながらも、複数の機関による同一データへのアクセスおよび情報共有を可能にした。
このプロトタイプは、アクセンチュアのブロックチェーンにおける知見、ならびにバイオメトリクス認証技術を用いた大規模な開発と導入経験を生かして構築され、マイクロソフト社が提供する可用性が高く、かつセキュアでグローバルなパブリッククラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」上で稼働する。
個人情報へのアクセスおよび開示・共有のための権限は、その個人情報にアクセスが許された個人の承認を条件に付与できるように設計されている。また、このプロトタイプは非中央集権型の分散型データベースを採用しているため、中央機関が介在することなく、事前の承認を得た複数の関係者による維持管理が可能になる。
加えて、このプロトタイプでは個人の認証データは保持しない仕組みとなっていますが、認証の対象となる個人の事前承諾により、オフチェーンの既存システムとの連携も可能だ。なお、アクセンチュアとマイクロソフト社はこれまでも、ID2020の創設アライアンスパートナーとして資金や技術資源を提供している。このプロトタイプのデモンストレーションは、6月19日に国連本部で開催されたID2020サミットにおいて発表された。
アクセンチュアのプロトタイプは、既存の認証システムと相互連携できるため、個人認証データは常にオフチェーンに格納される。この仕様は、マイクロソフト社が創設メンバーである分散型ID認証ファウンデーション(Decentralized Identity Foundation)の原則に準拠するほか、エンタープライズ・イーサリアム・アライアンスのプライベート・ブロックチェーン、およびパーミッション型ブロックチェーン(管理者によるアクセス制限が設定された)のプロトコルを採用している。
公的な個人認証の手段を持たない人々が直面する課題の解決に向けて、アクセンチュアは「ユニーク・アイデンティティ・サービス・プラットフォーム」を活用して、指紋や虹彩などの生体データ管理を行う画期的なバイオメトリクス認証システムを提供している。
この技術により、難民の個人認証情報の提供が可能となり、必要な時に必要な場所で、迅速な難民支援を受けることが可能になった。現在、アクセンチュアのプラットフォームは、国連難民高等弁務官事務所(United Nations High Commissioner for Refugees)が利用するバイオメトリクス認証管理システムの中核として採用され、アジア、アフリカ、カリブ諸島など29カ国130万人以上の難民を対象に運用されている。このシステムは、2020年までに対象を75か国700万人以上の難民支援に拡大することが期待されているという。