あなたが仕事によって生み出すものは、「後世に残したいもの」か「ゴミ同然のもの」か?
「アート」と「サイエンス」。このふたつは、決して相反するものではないが、いまの世の中は「サイエンス」に偏りすぎて、「アート」がないがしろにされている。「Zen2.0」で山口周氏が行った講演では、「アート」と「サイエンス」の理想的なバランスについて問題提起がなされた。
まず山口氏は、会場の来場者に向けて、「ひとつの問い」から講演をはじめた。
地球に人類が住めなくなって、スペースコロニーに移住するとき、各国の文化遺産をひとつだけ持っていけるとしたら何を選びますか?
山口氏は、同様の問いをほかの講演やワークショップ、プライベートでも多くの人に投げかけているというが、回答は決まって、国宝や重要文化財など、10世紀~17世紀ごろにつくられたものに集中するという。一方、20世紀~21世紀につくられたものはほとんど言及されない。またこれは日本に限られた話ではなく、世界のどんな国でも同じような結果になるという。
つまり、多くの人が価値を感じているものは、産業革命以前につくられたものだということです。現代人が、莫大な地球資源やコンピュータの力を使い、心身を困憊(こんぱい)させながらつくっているのは、決して子孫に残したいようなものではない。言ってしまえばゴミも同然ということです。個人的には、20世紀の文化である『ビートルズ』は宇宙にも持っていきたいですけどね。
この「問い」は、多くの人にとって目から鱗だったのではないか。自分の労働によって生み出されたものを、はたして宇宙にまで持っていきたいかと問われると、自信をもって「YES」と答えられる人は少ないだろう。
それではなぜ、人々は多くの資源や人的リソースを使って、取るに足らないものをつくるようになってしまったのか。