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Biz/Zineインタビュー (AD)

次の時代に求められるビジネス書とは? Biz/Zineと翔泳社書籍編集部の両編集長が語る

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 Biz/Zineを運営する翔泳社では現在、ビジネス書の編集者を募集している。翔泳社はこれまで『イノベーションのジレンマ』(2000年)や『ビジネスモデル・ジェネレーション』(2012年)といった翻訳書を中心にビジネス書を手がけてきたが、次の時代にはどんなビジネス書が求められているのか。書籍編集部 統括編集長の臼井かおるが、Biz/Zine編集長の栗原茂に訊く。

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これから求められるビジネス書の傾向

臼井:翔泳社書籍編集部の統括編集長、臼井です。今回、翔泳社がビジネス書の編集者を募集するにあたり、Biz/Zineの編集長である栗原さんに近年の日本で盛り上がったビジネス書の傾向や、これからどんなビジネス書が求められるのかをうかがいます。また、長年勤めていることもあって、翔泳社がどんなビジネス書を刊行してきたのかも聞ければと思います。

栗原:よろしくお願いします。今はBiz/Zine編集長ですが、翔泳社に入社した当時は書店営業をしていて、ビジネス書も多く担当してきました。『イノベーションのジレンマ』が発売されたとき、この本を手に書店を回ったことを覚えています。

臼井:さっそくですが、普段Biz/Zineを運営する中で、最近のビジネス書の傾向や、今後求められそうな領域はどういうものだと感じていますか?

栗原:『イノベーションのジレンマ』が登場した2000年頃から読まれてきたのは論理思考(ロジカルシンキング)や問題解決の理論・フレームワークを紹介した本ですね。それがビジネスパーソンの新しい教養と捉えられていたんです。私もビジネス書を売るためにかなり読みました。

 こうした教養、いわば必修科目というのは年々バージョンアップしています。もはや論理思考は当たり前になっていて、そこにプラスしていく知識が必要になっているんですね。そこで私が注目しているのが、「新たな原理原則」と「領域横断型の知識」という2本の軸です。

「新たな原理原則」については、『反脆弱性』(上下巻、ダイヤモンド社、2017年)が代表的な本の一つではないでしょうか。本書ではこの世界の不確実性をいかに味方につけて生き延びていくか、そのための新しい思考法を「脆弱、頑健、反脆弱」という概念をもとに語っています。

 また、「領域横断型の知識」においては、ビジネスパーソンが物理学や生物学からヒントを得る、歴史や哲学などリベラルアーツを学ぶ、といった流れに象徴されます。

 自然が作り上げてきたデザインやシステムを学べば、それを武器としてビジネスに活かせるという考え方が台頭してきたんですね。Biz/Zineでも人工生命(ALife)の記事が大きな反響を呼びました。そういう分野の研究者とビジネスパーソンが対談することに、読者も関心を持っているようです。

 リベラルアーツについても同様で、たとえば哲学を学ぶことで、世の中、あるいは自社のあり方を批判的に問い直すことに応用できます。昔からある常識や慣例、上から降りてくる命令に思考停止で従う人間になってしまうことは、自分にとっても会社にとってもいいことではないわけです。

 いずれにせよ、多分野に渡る知識や考え方を学んで自分たちのビジネスに活かすという方法論が一般的になりつつあります。つまり、その指南書が求められているということですね。

 ぱっと見てマニアックだと感じる本も、意外と売れていることがあります。ビジネス書を企画する編集者としては難しいところですよね。やはりそれなりの読者数を見込まなければならず、マニアックすぎると採算が取れません。しかし、もしかしたらそのマニアックな知識こそが足りていなくて、広く求められている可能性もあると。

 2000年から現在までに一般化してきたベースとなる知識に、何をプラスするか。これを見つけ出すことが今後の編集者の仕事になるでしょうね。トレンドの変化は比較的大きいので、チャンスはいろいろと転がっているように思います。

栗原茂
栗原茂:翔泳社 Biz/Zine 編集長

時代を捉えた『イノベーションのジレンマ』

臼井:翔泳社としては『イノベーションのジレンマ』のあと、大きな動きとして2012年に『ビジネスモデル・ジェネレーション』が話題となりました。翔泳社のビジネス書について、栗原さんはどんなふうに見てきましたか?

栗原:20年以上前から翔泳社にいるので、これまでどんなビジネス書を手がけてきたのかはおおよそ把握しています。昔は翻訳チームがあり、サイエンス系の翻訳書をけっこう刊行していたんです。そのチームが1998年頃に今後の方針を見直すことになり、今も昔も翔泳社の得意領域であるIT技術書と対になるようなビジネス書を刊行していくことになりました。

臼井:ネットが普及し始めて、ネットビジネスが流行り出した頃ですよね。ITが最先端の技術として注目されるだけでなく、社会やビジネスもネット中心になりつつありました。

栗原:2000年頃はITバブルでしたから、関連書籍はたいへん盛り上がっていました。翔泳社もかつて紙のIT雑誌である『DB Magazine』を作っていて、その広告枠がすべて埋まってしまうような状況だったんです。『パーミション・マーケティング 』(1999年)や『ネットビジネス戦略入門』(1999年)も非常に読まれましたね。

臼井:ビジネスの中心がネットに移りつつあった時代で、その領域の指南書を刊行できたのが当時の翔泳社の強みでした。

栗原:今だとITとビジネスは密接な関係にあって当たり前なんですが、2000年以前はそれぞれが分離していました。その頃にITとビジネスを結びつけ、海外で注目されているビジネス書をいち早く翻訳してきたのが翔泳社だと思います。

 書店営業としてIT技術書だけだと厳しいなと感じているところに、『イノベーションのジレンマ』を筆頭としたビジネス書が加わり、売上にも相当のインパクトを与えてくれました。

 その当時、ほかの出版社ではまだITとビジネスがつながるという流れに追いつけておらず、『イノベーションのジレンマ』も「IT領域の話が出てくるからIT書だ」と言う人もいたようです。だからこそ、攻めの姿勢で本書をビジネス書として刊行した翔泳社が誇らしかったですね。同書は今でもBiz/Zineで関連記事を掲載するほど大きな財産となっています。

 ちなみに余談として、原著の『The Innovator's Dilemma』を「イノベーターのジレンマ」と訳すか「イノベーションのジレンマ」とするかを担当編集者に相談され、日本ではまだイノベーションのほうが知られているだろうと思って「イノベーションでどうですか」と答えたんです。それが決め手になったかはわかりませんが、いまや一般的な言葉として認知されていますから、ちょっとした自慢に思っています(笑)。

臼井:編集者としても、20年近く読まれ続ける本に携われるとなるとモチベーションが上がりますよね。ビジネス書には長く読まれる古典が多いですから、まだまだそのチャンスがありそうです。

 一方で、『ビジネスモデル・ジェネレーション』はコミュニティによって作られた本で、オンラインHUBに400名以上が集まって作ったそうです。内容、制作手法ともに2010年代のトレンドを取り入れた本だと言えます。

臼井かおる
臼井かおる:翔泳社 書籍編集部 統括編集長

栗原:『ビジネスモデル・ジェネレーション』は既存事業だけだとやっていけなくなる、ビジネスモデルを変えていこうという世間の空気感をうまく掴んだ本ですよね。実際、そこからビジネスモデルに関する本が他社も含めたくさん刊行されるようになりました。

 制作手法で言うと、最近ではクラウドファンディングで翻訳書を作るというプロジェクトがありました。どんどん新しい手法が出てきていると驚かされたんですが、この先もっと様々な手法が登場するような気がします。

求める編集者像は飽きっぽい人

臼井:今回のビジネス書編集者の募集に関しても、そうした情報やトレンドに敏感な方に興味を持っていただきたいですね。

栗原:その点では、翔泳社ではほかの出版社にない強みがあると思います。書籍編集部だけでなくBiz/ZineやMarkeZineなどを運営するメディア事業部があるからです。

 Webメディア、セミナー、イベント、そして書籍を一気通貫で展開しているので、たとえ書籍編集部に所属するとしてもいろいろな媒体や手段を活用することができます。私自身、編集長としてBiz/Zineに記事を掲載しながらセミナーを運営し、イベントも年4回ほど開催しています。

 もちろん書籍の編集だけをしたい方もいるかもしれません。ビジネス書だけでなくIT技術書、デザイン書、生活系の本などジャンルは幅広いので、やれることは多いでしょう。しかし、自身のキャリアを考えたとき、編集しかできないというのは不安がありますよね。

 将来のためにWebメディアに携わってみたい、イベントを企画したいと思ったとき、その道が社内にあるのが翔泳社のいいところだと思います。

臼井:最近はMarkeZineとコラボしたMarkeZine BOOKSに力を入れていますし、むしろ社内を横断して本を作るのが当たり前になりつつあるように思います。こういったことをビジネス書でもやっていくために、今回の編集者募集に至ったわけです。

栗原:まだ頭の中にあるだけですが、Biz/Zine BOOKSもいつかやりたいと考えてはいます。ぜひビジネス書編集者の方とコラボしたいですね。臼井さんはどんな方をイメージされていますか?

臼井:「ビジネス書だから」と枠を決めてしまわず、どんどん領域を横断していける方です。ここまでの話でもあったように、ビジネスの領域だけでもトレンドは移り変わっていきます。日頃から国内外問わずビジネス周りの最新情報をキャッチアップするのは当然、さらに言えば日本のビジネスシーンに影響を与えたいという気概を持っていてほしいと思います。

栗原:ある意味、飽きっぽい方がいいかもしれません。

臼井:「石の上にも3年」という方よりは「来年は別のテーマを探りたい」と半歩先に行けるような方ですね。翔泳社のビジネス書は翻訳書が多いですが、必ずしも翻訳書である必要はありません。地固めをしながら、どんどん翔泳社ならではのビジネス書を刊行していくつもりです。

 ビジネス書の企画編集に興味がある方は、ぜひ応募してみてください。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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