BEPPU PROJECTのアートとデザインが生み出し続ける、新たな地域文化と経済

地域文化と経済のあいだ(3) BEPPU PROJECT 代表理事 山出淳也氏

 地域の資源と文化、可能性を紐解き、新たな経済を生み出すためには何が必要なのか―。本連載では、次代のデザイナーのための教室「XSCHOOL」をプログラムディレクターの一人として福井で実践する、リ・パブリックの内田友紀が、さまざまな地域の文化と経済のあいだで活躍する人と組織を取材。地域文化と経済の新しい循環系と、そこから見える未来について考えていきます。
 第二回目は、大分県別府市を起点に、アートのみならず地域文化と経済に関わるさまざまなプロジェクトを展開するNPO法人「BEPPU PROJECT」代表理事の山出淳也氏にお話を伺いました。

[公開日]

[語り手] 山出 淳也 [聞] 内田 友紀 [写] 西田 佳世 [取材・構成] 白井 瞭 佐々木 恵美 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 地域経済 事業開発 社会・公共

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地域文化と経済に包括的な視点で取り組むアートNPO

内田(株式会社リ・パブリック 共同代表):
 私たちは福岡や広島、福井をはじめとしてさまざまな地域のプロジェクトに携わる中で、いかにして文化とともに経済を動かしながら、まちの循環を作っていけるのか、ということを考えています。

 先ほど、BEPPU PROJECTが手がけている清島アパートとSELECT BEPPUを見学してきました。またこれまでも、友人をはじめ、たくさんの方からBEPPU PROJECTの文化を中心としたユニークなご活動を伺うたびに、ここ別府で何が起きているのだろうと、とても興味深く思っておりました。今回は、その中心にいらっしゃる山出さんの考えをお伺いできたらと思っています。まずはBEPPU PROJECTについて、教えてください。

山出(NPO法人BEPPU PROJECT代表理事):
 BEPPU PROJECTは、大分県別府市を拠点とするアートNPOです。2005年に僕が立ち上げて、今は職員14名、予算規模は2億円程度。そのほとんどはコンサルティングがベースで、補助金や助成金は15%程度で自主事業のために使われています。

 それぞれ人とのコミュニケーションの取り方が違うし、いろんな人が地域の資源を見た方がおもしろいと思っています。

内田:
 具体的にはどんな事業を行っているんでしょうか?

山出:
 これまでBEPPU PROJECTでは1000を超えるプロジェクトを実現してきましたが、主な活動の軸は6つあります。中心に据えているのは「文化芸術振興事業」で、国際シンポジウムや芸術祭をはじめとするアートの企画運営ですね。加えてこの事業の一環として、大分県内の10分の1の小学校へのアーティスト派遣も行っています。

 他には、清島アパートのような「移住・定住に向けた環境整備事業」、「福祉施設へのアウトリーチ・障害者アート」を通した、新しい社会の在り方を考える企画作り、「新たな観光需要を掘り起こす情報発信事業」、「クリエイティブ×企業による産業振興事業」などを行っています。

 また、美術館外のアート企画で地域生産者と出会ったことをきっかけに、大分の景観や風土を守るための「産品のブランディング・六次化事業」もやっています。この事業ではこれまで80ほどの商品を開発していて、2017年8月には大分銀行が引き継ぐ形で、Oita Made株式会社を設立。BEPPU PROJECTからスピンアウトした、特産品を中心に扱う地域商社になりました。

タイトルOita Made Shop(写真提供:BEPPU PROJECT)

 これら6つの事業はそこからお金をもらっているわけではありませんが、管轄としては文科省、総務省、厚労省、観光庁、経産省、農水省になります。つまり、それぞれが別々のタイムラインと予算で動いているんですが、ある段階、ある瞬間に見ていくと、全部がつながっていくんですよ。

内田:
 なるほど、それぞれをうまく切り分けられつつも、包括的な視点で地域の文化と経済の創出に取り組まれているんですね。
 そもそも山出さんはどんな経緯でBEPPU PROJECTを始めたのでしょうか?

山出:
 僕は大分県大分市出身で、もともとアーティストです。19歳で初めて展覧会をして、バブル時代だったのもあってすごく売れて(笑)。その後、東京や海外の展覧会によばれるようになり、ニューヨーク、そしてパリに住みながら、各地でアーティスト活動をしていました。

山山出 淳也氏 (NPO法人BEPPU PROJECT代表理事)

 そのとき、たまたまネットで別府のまちづくりの記事が目に留まったんです。それは「竹瓦温泉」というまちのシンボルのような建物の取り壊しに対して、まちの観光関係者たちが立ち上がり、なぜ残すことが必要なのかを自分たちで考え、他の人たちに伝えるために、ボランティアでまち歩きを実施しているという話でした。

タイトル竹瓦温泉(写真提供:BEPPU PROJECT)

 そして、「お客さんが一人でも来れば、必ずツアーを出すから、気軽に来てくださいね」という言葉でその記事は締めくくられていた。

 これを読んだときに、僕は大変美しいなと思ったし、この人たちに会いたいなと思った。ただね、この最後の一文が気になったんですよ。なぜかって言うと、「別府って団体観光客を目当てにしてきた町だから、そもそもそんなことできないじゃん」って思ったから。

 それで思い切って、市役所に国際電話をかけてみたんです。そのときに出た市の担当者の返答はシンプルで、「やってます。とにかく一度来て欲しい」と言われたんですよ。それも、誰かにやらされてるとか、誰かがやっているのを代弁してるとかではなくて、自分のこととして大切にやってるんだなということがすごい伝わって。そこから1年間ほどかかって、ヨーロッパでの生活をやめて、日本に戻りました。

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