ローカル企業の未来をチームでつくる――東京×地方の新たなコラボレーションを実験する「Project 180」【後編】

 東京をはじめとした大都市圏で働きながらも、いずれは地元や地方で手ざわりのある仕事に就きたい、地域社会に貢献するような仕事をしたいという想いをもつ人が増えている。一方で、地方の中小企業の次代を担うリーダーたちは、大きな社会変化のうねりのなかで、今後もビジネスを続けるためにはチャレンジをしなければならないという自覚はあるものの、いかに新たな事業をつくるか悩んでいる。
 この2者を結びつければ、創造的なアイデアが生まれるのではないか?という仮説のもと、ユニークなプロジェクトが熊本でスタートした。その名も「熊本イノベーションスクールProject 180」。基本コンセプトは「自社の未来をつくる新規事業を、チームで生み出す」こと。2018年8月から12月まで約4か月の間に行われる4回の集合研修を軸にした、実践型スクールだ。
 後編となる今回は、参加した8社の熊本のローカル企業を代表して、株式会社マスナガ代表取締役の森弘国さんにProject180を振り返ってもらった。3代目社長の森さんは、なぜスクールに参加したのか、どんな変化があったのか、そして今後のビジョンとは──。そこには予想を超えた学びや展開が繰り広げられていた。

[公開日]

[取材・構成] 岡橋 毅 佐々木 恵美 伴 ちひろ

[タグ] 事業開発 事業承継 ローカル企業 創造人材 中小企業

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創業70年の機械工具商社の3代目

タイトル

──Project180の話の前に、森さんの背景を知りたく、まずは会社について教えてください。

創業は昭和24年、今年で70年を迎えた機械工具商社です。母方の祖父が立ち上げた会社で、戦後まもなくバリカンの販売からスタート。祖父が戦地で知り合った大阪の方に「うちの商品で商売しないか」と言われて起業したそうで、その会社とは今もお付き合いが続いています。戦後復興期の建設ラッシュに伴って、建築関係がメインに。バブル期には人にだまされて、いったん会社をたたんだことも。でも、多くの方からの協力を得て、半年後にマスナガとして再起。熊本に半導体工場ができたのを機に、父の代からは半導体を作る設備の部品や棚、工具類など、半導体工場との取引が主軸になりました。

──森さんは会社を継ぐ予定だったのですか?

小学生のときから「お前は次期社長だ」とすり込まれてましたからね(笑)。ただ、40歳までは好きなことをするつもりで北海道の大学に進学し、家具メーカーに就職。ドイツに留学しようと熊本に戻ったら、父親の右腕だった専務が交通事故で亡くなったこともあり、2007年マスナガに入社して営業担当になりました。2012年に31歳で社長になると、直後にリーマンショック。売上は5億円から3億円まで落ち込みました。焦って、全く違う業種・マーケット・商品に手を付けたりしましたが、うまくいかない。既存の業界でしっかりやろうとお客様まわりをしている中で、熊本に新しく新幹線の車両所を作られたJRさんとのお付き合いが始まりました。当初は工場で使う機械工具の手配がメインでしたが、数年かけて新幹線の部品の開発に成功し、今はJR九州と西日本で採用されています。

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