昆虫テックベンチャー「暫定CEO」流郷綾乃さんは“運命志向な多分岐キャリア”を突き進む

第10回対談ゲスト MUSCA代表取締役 暫定CEO 流郷綾乃(りゅうごう・あやの)さん:前編

 トラリーマンとは、会社組織が決めた社命ではなく、自ら決めた使命を胸に邁進する「会社員の虎」のこと。その名付け親である藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者)が、“トラリーマンのモデル1号”に認定した楽天大学学長の仲山進也氏は、著書『組織にいながら、自由に働く。』も話題だ。
 先の見えない時代を突破するイノベーティブ人材、トラリーマンの実在モデルを紹介する連載の10人目に登場するのは、国内外で注目を集める昆虫テックベンチャーMUSCAで「暫定CEO」を務める流郷綾乃さん。その肩書きの背景を聞くと、トラリーマンならではの仕事観が見えてきた。全2回の前編記事をお届けする。

[公開日]

[語り手] 流郷 綾乃 仲山 進也 [取材・構成] 宮本 恵理子 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル トラリーマン 加減乗除 MUSCA

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サラブレットの種馬ならぬ種バエ? 28歳女性が昆虫テックの“暫定CEO”就任のワケ

仲山進也さん(以下、敬称略):流郷さんと知り合ったのはほんの数週間前。ランサーズのタレント社員・若宮和男さん (uni’que / ユニック 代表取締役CEO)が主催したイベントに僕が呼ばれて、そこに流郷さんも来ていて紹介してもらった。そしたら、(スマートロボットの)ロボホンぶら下げてるし、「面白そう(ヤバそう)な人、見っけた!」と思いました(笑)。

流郷綾乃さん(以下、敬称略):ハハハ(笑)。基本、ずっとぶら下げています。

ロボホン

仲山:そして、名刺交換したら「暫定CEO」という謎の肩書きが書いてあって。

流郷:すみません、肩書きが変態で(笑)。

仲山:さらに会社の事業を聞いたら、ハエの幼虫を使って世界の食糧問題を救う最先端テクノロジーだとか言って、ますます意味不明で(笑)。しかも、複業家でもあるということで、もうこの連載対談に来てもらうしかないと思ったわけです。

流郷:錚々たる方々に混ぜていただいて大変光栄です。会社の事業の話はもうそれだけ深く熱く語り過ぎちゃうので、今日は抑えておきますね。新しいITと呼んでいるんですけど、Insect-Tech(昆虫テック)に興味を持っていただいた方はぜひ「MUSCA」を検索いただいて。

仲山:「ムスカイエバエとムスカシステムの解説アニメーション」。あの動画、すごく面白いですよね。

ムスカイエバエとムスカシステムの解説アニメーション | MUSCA Inc.

流郷:はい、結構こだわっています(笑)。うちのイエバエちゃんたちは、本当にすごいんですよ! 45年間かけて1,100世代の品種改良を重ねてきて、競馬でいうG1種のサラブレッドの種馬ならぬ“種バエ”を所有しているのがうちの会社で……と喋り出すと止まらないので、このへんで抑えます(笑)。さて、何からお話ししましょうか。なんでハエの会社の社長になったのか?

仲山:そうですね。「暫定CEO」の「暫定」がとにかく気になります。

流郷:2016年12月に会社が創業した時には執行役員として呼ばれて、最高広報責任者という肩書きだったんです。私はもともと広報が専門で、MUSCAに出資したBASESという会社に執行役員として入っていたんですよ。BASESでも最高広報責任者をやっているんですが。で、MUSCAが創業するにあたって「執行役員として出向してほしい」と言われて、事業に感動して「やりますよ」と。

それで広報戦略を行っているうちに、ある日電話がかかってきて「あのー、MUSCAのCEOになってほしいんだけど」って。「何言っているんですか? 意味が分かりません」って返したんですけど、よく話を聞けば、CEOをはじめCOOやCFOなど経営機能である“CXO”人材をすべて揃えていくまでの募集期間に表に立つ人間として引き受けてほしいと。「えー、それにしたって私にはCEOという器もネームバリューもないですから」と押し引きした結果、「そうだ、“暫定CEO”だ!」と誰かがひらめいて(笑)。「そーいえば、スティーブ・ジョブズも暫定CEOの時期あったしね」とかなんとか言って。昆虫テクノロジー企業MUSCAの暫定CEOになりました。

MUSCAの事業はすごく将来性もあってテレビのディレクターの方からも絶賛されるんですけど、「でも、ハエはね……、ごめんね。テレビには映せないかも」とお断りされることが多かったんですよね。私も、いまさら「ハエ=厄介者、悪者」というイメージを打ち消そうとは思ってないです。ハエなどの昆虫の力を正しく知っていただき、新たなイメージを定着させるだけのパワーが必要で、その一つとして“女性活躍”の流れを活用したという背景もあります。

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