NTTドコモ中村氏が語る5Gの未来──ビジネス展開のために認識すべき現状と課題とは?

 スマートフォン向け次世代通信規格「5G(第5世代移動通信)」の商用サービスが4月3日、韓国と米国で始まった。日本では2019年から2020年までに5G商用サービスが導入される。幅広い技術革新が期待される新技術であり、さまざまな分野から5Gへの期待が聞かれるが、実際にはどんなことができるようになるのだろうか。株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)5Gイノベーション推進室室長の中村武宏氏が「Keysight 5G Summit 2019」で、「5Gのリアルと未来」と題した基調講演を行った。その中で語られたさまざまな取り組みと課題、今後の見通しを紹介する。

[公開日]

[講演者] 中村 武宏 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 黑田 菜月 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

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ドコモとパートナーたちによる5Gの可能性を広げるための実証実験

 NTTドコモはオープンパートナープログラムとして、5Gの実証実験、デモを世界に先駆けて数多く実施しており、さまざまな5Gユースケースを訴求している。5Gの標準仕様である3GPPも完成し、さらに次の仕様を開発中でもある。その中でドコモは現在2500社を超えるパートナーと共に行っている実証実験を行っている。これは、情報共有とマッチング、5Gの体感を提供するドコモ5Gオープンパートナープログラムによって生まれたソリューション協創である。中村氏はその中から5Gのポテンシャルが伝わる取り組み事例の一部を紹介した。

 最初に紹介されたのは株式会社フジテレビジョン等が研究を進める「ジオスタ」である。これは、サッカーの試合を、AR技術を活用し、タブレットやスマートフォンを通して自宅のテーブルなどに立体的に浮かび上がるように再現するコンテンツである。フィールド全体を見ることも、ミクロに見ることもできる。タブレットと連動して贔屓の選手の顔を拡大することもできる。大画像のモニターがあるパブリックビューイング会場やスポーツBarなどでの利用も期待できる新しいスポーツ観戦体験を提供する技術だ。

 このジオスタは、フィールド全体をカバーするカメラ映像を画像解析し、その結果をクラウドサーバーにアップロードしてクラウド上でAR用CGを生成することによって行う。5Gの高速、大容量、低遅延といった特徴を用いたものである。

 同様に5Gがエンターテイメントで活用できる事例として、ヤマハ株式会社等が手がけている多地点高臨場遠隔合奏の技術も紹介された。現状では通信に遅延が生じるために遠隔地にいる人たちと通信を通じてリアルタイムにぴったりと息のあった音楽セッションをすることはできない。しかし5Gは低遅延であり、データ容量が大きいために高音質の音声と映像の伝送が可能になる。

 2018年12月には、東京スカイツリーにあるドコモ5Gオープンラボと、福井県立恐竜博物館、東京ビッグサイトのイベント会場にいる、ドラム、ベース、ギターのプレーヤーがこの技術を使ってフリーセッションのデモンストレーションを行った。遠隔拠点で同時に演奏を行うライブコンサートや、遠隔スタジオとの共同楽曲製作、音楽レッスンなどの教育現場での活用が期待できる技術である。

 パナソニック株式会社等と共同研究を行う5Gを用いた遠隔博物館訪問も、さまざまなシーンで活用が期待できる技術である。これは、遠隔地にある博物館を、まるでそこにいるかのように訪問でき、現地の人ともコミュニケーションができる技術である。360度カメラや移動しながら撮影した映像・音声を臨場感があるようにリアルタイムで中継するためには、高精細映像の大容量伝送と画像を補正する技術が必要となる。それを5G無線の大容量伝送とパナソニックの可変コーディングによって実現している。将来的には観光や、教育などへの活用が期待される。

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