注目度が高まる映像解析AIシステムの注意点とは
映像解析AIのシステムを自社で開発する場合は、運用フェーズに入っても注意が必要である。アルゴリズムは毎年数千と新しいものが誕生する。テキストや音声ではなく映像を扱うため、言語はあまり関係ない。そのため、世界で誕生したものは日本でもすぐ活用できることが多い。映像解析AIを他社との競争に関連するような部署で使っている場合、それをすぐに導入し、導入後は効果検証ができる環境が必要だ。
今までに述べたように自社で映像解析AIのシステムを開発して導入する場合には、導入できるかどうかを確認する段階から大きなコストがかかり、運用段階でもシステム改変と効果検証ができる環境を整えていく必要がある。プラットフォームを利用すれば、そういった心配は必要がなくなる。
とはいえ、自社運用(オンプレミス)のシステムにはデメリットばかりだというわけではない。クラウドや従量課金制のプラットフォームの利用に抵抗がある企業もあるし、初期投資や改変にコストはかかれど、継続利用をする場合には金銭的なメリットが出てくることもある。
「大事なのは、自社の環境に特化した設計・構築をするか、汎用的なプラットフォームを活用するかを決めることです。汎用的に構築されたプラットフォームを自社独自の要求に応じてカスタマイズしようとすると、逆に高くついてしまうこともあります」と井手氏は注意を促す。「SCORER」は導入企業の環境にあわせた構築、汎用的なプラットフォームの活用どちらでも対応可能なため、限られた映像解析予算の中で最大限の成果を出すためにも、相談の前に自社の方針を決めることが重要となる。
また、映像解析AIの導入に形ありきで進めようとすることにも注意が必要だ。たとえばフューチャースタンダードでは既設の監視カメラを利用して行いたい、このアルゴリズムを利用したい、と問い合わせを受けることもあるという。しかし、目的が異なるものを無理に使おうとすると、精度も出ず、本来目指す効果が得られないこともあり、要望に合わせるためにカスタマイズするために逆に高くついてしまうことが多い。目的に応じて柔軟に考えていく必要がある。
様々な活用法が考えられ、今後の成長が期待できる映像解析AI。井手氏は最後にこう話して講演をしめくくった。
映像解析を行おうとすると、SFのディストピアのような気持ち悪さを感じる方もいらっしゃるかもしれません。それに関しては経産省と総務省がIoT推進コンソーシアムでカメラ画像を利活用するためのガイドラインを出しています。『こんなことができるのでは?』と思いついたら、そのガイドラインを一読して課題やレギュレーションを把握していただいたうえで、ぜひご一緒できればと思います。