第四次産業革命の渦中にある現在、企業は「テクノロジーの氾濫」を受け業務の効率化及び高度化などの観点から様々な技術を導入している。人間の仕事は、ロボットによる事務作業の自動化などにより消滅するものもある一方で、多くの仕事は人間特有の能力を活用する仕事へと変化していくと考えられている。また同時に、近年は長時間労働の削減、副業の促進、単独の業務を請負うギグ・ワーカーの増加などにより多様な働き方が広がり、一人ひとりの異なる仕事の意味合いが重視される「個人の台頭」が企業内でも表れてきている。
こういった環境の変化は、企業に新たな組織概念の必要性を示す。デロイト トーマツはこの新たな組織を「ソーシャル・エンタープライズ」と定義づけ、その特徴として、既存の企業の枠にとらわれず、社会課題解決と自社利益最大化の両立及び、社内外の多様な人材等との関係構築によるエコシステムの形成を挙げる。ソーシャル・エンタープライズへ進化するにあたり、企業は従来の階層的な縦割り型組織からオープンなネットワーク型組織へと移り変わり、標準化(ゼネラライズ)された業務を割り当てる役割から、個人化(パーソナライズ)された体験を提供する役割に変化しなければならないという。また、個々人の志向に沿った業務・教育・報酬を設計し、「人間中心」の組織改革を進めると同時に、自己成長や自己実現を促すことで、機械化され得ない創造性の発揮を促進することが求められているとしている。
今回の調査では、こういった改革を実現するために企業が準備すべき10の人事・組織トレンドを「労働力の未来」「組織の未来」「HRの未来」の3つの分野に整理し、それぞれどのように人間中心の組織改革を実現すべきか解説している。
労働力の未来
- トレンド1:代替的労働力:現在の主流
- トレンド2:ジョブからスーパージョブへ
- トレンド3:21世紀のリーダーシップ:伝統と革新の交点
組織の未来
- トレンド4:エンプロイー・エクスペリエンスからヒューマン・エクスペリエンスへ:仕事の意義の回復
- トレンド5:組織のパフォーマンス:それはチームスポーツだ
- トレンド6:報酬:新しい期待値に対するギャップを埋める
HRの未来
- トレンド7:人材へのアクセス: 採用を超えた人材獲得
- トレンド8:生活・生涯を通じた学習
- トレンド9:タレント・モビリティ:人材獲得は内部から
- トレンド10:HRクラウド:終着点ではなく出発点