渋沢栄一の「合本主義」と「ステークホルダー経営」の共通点
続いてコモンズ投信株式会社会長の渋澤健氏が、高祖父である渋沢栄一の思想を引きつつ、ステークホルダーを巻き込んだ社会、共創、経営に関する講演を行った。
渋沢栄一は第一国立銀行という日本初の銀行の初代頭取であり、「日本資本主義の父」と言われている。しかし渋沢栄一自身は「資本主義」という言葉は使っておらず、「合本主義」という言葉を使っていた。それは「“共感”によって寄り集まり、“共助”によってお互いを補い、今日よりも良い明日を“共創”すること」を意味していると、渋澤氏は説明する。ただし、その時代の経営者が同様に考えていたかといえば、そうではない。渋沢栄一は、よく三菱財閥の創業者の岩崎弥太郎と比較される。経営はどうあるべきかという岩崎の質問に、渋沢栄一が「様々な人が出資し、事業が成功したら、様々な人に還元する。そのように経営すべきだ」と答えたのに対し、岩崎は「それではうまくいかない。一番才能のある人物が経営でグリップを握って資本を支配する方が効率的だ」と答えたという。岩崎の発想は、現代でも極めて一般的な「シェアホルダー資本主義」そのもので、渋沢の発想は「ステークホルダー資本主義」そのものなのだ。