テレワークは働き方改革の目玉施策として、さらには東京オリンピック開催期間における交通混雑緩和策として多くの企業が取り組んできた。新型コロナウイルス感染症 (以下、COVID-19) の拡大防止策の1つとして政府がテレワークを推奨したことから、ここにきてますます注目され、特に都市部の企業にとって、テレワークの導入は喫緊の課題となっている。
ガートナーの企業内個人向けの調査では、従業員数2,000人以上の企業に勤務する従業員の8割近く (76%) が、2017年11月の調査時点でテレワークに取り組んでいたというデータも存在する。緊急対策の一環として今回一気に実施に踏み切れた大企業が相次いだのは、このように、ある程度下地が整っていたためと考えられる。とはいえテレワーク制度を導入している大企業の中には、実際の運用に尻込みするところも見られ、ガートナーにもテレワークの運用や勤怠管理の実施方法などについての問い合わせが寄せられているのだという。
ガートナーは、コラボレーションと勤怠管理という観点から、CIOやリーダーに対し、主にオフィス・ワーカー向けにテレワークを推進する際の注意点をまとめた。
自社のテレワークの準備態勢がどのレベルにあるかをチェックし、無理のない適用範囲 (対象者) を設定する
COVID-19の感染拡大を防ぐ上では、スピード感を持って一気に進めることが重要だが、「何とかなるだろう」と強引に進めてしまうと、業務が滞る恐れがある。企業の担当者は、まずはオフィス・ワーカーの業務内容によるテレワークへの移行難易度を理解した上で、自社の準備状況に鑑み、適用範囲 (対象者) を設定することが肝要。ガートナーでは、テレワークの実施段階を、6つのレベルに分けている(図1)。2019年4月に働き方改革関連法が大企業を対象に施行されて以降、多くの企業がテレワークを採用しているが、最も多く見られるのはレベル1に相当する企業。
これまでテレワークを導入してきた企業で生じた問題と、それらの回避策を知り、自社で発生し得るトラブルに備える
国内企業のテレワークへの取り組みがうまくいかなかった要因として、ガートナーでは以下の5つの課題を挙げている。
- 課題1. 資料が自宅から閲覧できない
- 課題2. ビデオ会議の品質が安定しない
- 課題3. コラボレーション・ツールの使い方が分からない
- 課題4. 勤務時間を正確に把握できない
- 課題5. 現場の従業員がシャドーITの利用を拡大してしまう