『都市5.0 アーバン・デジタルトランスフォーメーションが日本を再興する』では、「データ&アナリティクス」と「人間中心」からなるUDXが提唱されている。
ここで言う「データ&アナリティクス」とは、センシング技術にもとづくIoT、ビッグデータの活用、AIなどテクノロジーとデータの重要性を指す。また「人間中心」には、テクノロジーではなく人間の利便性を第一に考えるという意図が込められている。
これらの要素からなる「アーバン・デジタルトランスフォーメーション(UDX)」がなぜ必要なのか。その背景には、日本が抱える多くの課題が都市に起因することが挙げられる。
本書では都市の変遷を1.0から5.0まで説明しており、それぞれを「神の都市、王の都市、商人の都市、法人の都市、個人の都市」としている。現代の都市は4.0の「法人の都市」にあたり、企業活動が社会の中心にあり、都市には本社、地方には生産拠点、その中間に生活拠点が置かれてきた(「【尾原和啓×葉村真樹】都市は人間拡張の最大形態である──「都市5.0」をめぐって」を参照)。
しかし、昨今では働き方改革やDXによって、個人の力が強くなっている。コミュニティやファンベースのような考え方が台頭し、リモートワークの必要性と可能性も実感として認識されつつある。ゆえに、いかに個人をつなぐネットワークを構築できるかが企業にとっても社会にとっても重要となってきた。そこで、本書ではそうした都市を5.0の「個人の都市」と呼んで実現すべき目標に定め、そのための方法論としてUDXが提唱されている。
では、具体的に都市5.0を実現するにはどうすればいいのか。本書の後半にて、IoTとAI、MaaSとCaaS(Content as a service)、コミュニティ創造、さらにSDGsの視点からグリーンインフラについても議論し、都市5.0の設計思想が解説される。
詳細はぜひ本書を読んでもらいたい。社会課題の解決を目指す方に大きな示唆を与えてくれる1冊である。
目次
序章 なぜ今、「都市」なのか?
第I部 都市とは人間拡張の最大形態である
第1章 都市は人間の「脳」の拡張として誕生した
1 都市1.0:都市の誕生
2 都市2.0から3.0へ:文字メディアが都市を進化させた時代
3 「人間拡張」と「生命体」としての都市
第2章 都市という名の人間拡張が加速した時代
1 都市4.0「法人の都市」の誕生
2 欲望の拡張としての都市
3 近代都市計画の誕生と挫折
第3章 サイバーとフィジカルが融合する時代
1 Web1.0がもたらした都市の変化
2 Web1.0がひき起こしたデータ駆動型分権社会
3 IoT、AI、5G、ブロックチェーン、そして都市5.0
第II部 都市5.0へ向かうデータと分析
第4章 ビッグデータによる「都市の脈動」の把握
1 都市の動きをとらえるために
2 都市のスマートエイジングに向けて
3 組み合わせの観点と制度の革新が課題
第5章 IoTとAIによるインフラマネジメントの一大変革
1 インフラマネジメントとテクノロジー
2 インフラセンシングの技術開発
3 インフラマネジメントの未来のために
第III部 都市5.0を実現する設計思想
第6章 IoTとAIによる人間中心の都市像
1 都市5.0と情報通信技術
2 センサーネットワークの運用から見た都市5.0
3 都市5.0に向けた変革のために
第7章 都市を人間中心で設計する:MaaSからCaaSへ
1 都市生活者の変容とユニバーサルデザインへの国際的注目
2 MaaSからCaaSへ
3 SDGs時代の未来都市と人間中心設計の方向性
第8章 コミュニティ創造による「個人の都市」の実現
1 魅力ある都市の未来像
2 都市空間を活性化させる取り組みと実績
3 人間中心都市の実現へ向けた課題
第9章 グリーンインフラによる都市の持続的成長
1 グリーンインフラが描く明日
2 グリーンインフラ研究の実績と展望
3 グリーンコミュニティの実現へ
終章 アーバン・デジタルトランスフォメーションの時代に