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ビービット藤井氏に訊く、生成AIにより変わること──70点を100点のアウトプットするヒトの役割とは

【後編】ゲスト:株式会社ビービット CCO 藤井保文氏

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 本連載では、株式会社ビービットCCOの藤井保文氏を連載ナビゲーターに、各業界の実践者や有識者との対談を通じて「アフターデジタル最新潮流」を探求する。本記事では、前編に続き、連載ナビゲーターの藤井氏へのインタビューをお届けする。生成AIの登場により、サービス開発や顧客体験のデザインはどのように変化していくのか。生成AIの最新事例を手がかりに、アフターデジタル時代のBXTのあるべき姿を探った。

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生成AIの登場で「変わること」と「変わらないこと」

──後編では、生成AIがもたらす顧客体験への影響について伺いたいです。生成AIの普及以降、特に感じる変化はありますか。

 以前、クライアントから「生成AIがこのまま一般化した場合、既存のデジタル戦略や顧客体験戦略はすべて見直す必要がありますか」と尋ねられたことがあります。私の返答は「そんなことはありません」でした。生成AIが人間のあらゆる行動を代替できるのは、かなり先の話でしょうから、既存のデジタル戦略のすべてを破棄する必要はないと思います。

 ただ、確実に変化している部分もあって、特に「スピード」と「リソース」の二点での進化は目覚ましいですね。生成AIの登場により、サービスのプロトタイプやUIなどを超高速にアウトプットすることが可能になりました。そのため、サービスのプロトタイプを市場に出して、改善するまでのサイクルはかなり短くなりましたし、そのサイクルを回すリソースも少なくて済むわけです。

 これは顧客体験に関わる競争環境を大きく変えると思います。私自身の経験なのですが、3年ほど前にサービスの機能開発を依頼された際に、あるアイデアを提案したら「リソースが足りない」という理由で却下になったことがありました。しかし、その当時に生成AIがあれば、そのアイデアは即座に実現でき、すぐにでもサービスに実装できたはずのものでした。

 このように生成AIの登場により、「実装」の概念が大きく変わりつつあります。以前であれば、50億円を投資して100人のチームを組成しなければ実現できなかったことが、ほぼ無料かつ1人でも実現できるわけです。

 生成AIが完璧なサービスをアウトプットできるわけではありませんが、少なくともプロトタイピングのスピードは高速化するので、短期間でサービスの精度を劇的に向上させられるようになるでしょう。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:株式会社ビービット/クリックすると拡大します

──それは劇的な変化ですね。とはいえ、生成AIもデータと同様に「どのように使うか」が重要なポイントになるのではないでしょうか。

 おっしゃる通りです。実は生成AIの活用については、前編で説明したOMOと構図が似ていると思っています。つまり、OMOではオンラインとオフラインの強みをそれぞれ正しく理解して、適切に組み合わせる必要があった。他方で、生成AIの場合は、人間といかに適切に組み合わせるかが重要なポイントです。

 コールセンターの例がわかりやすいかもしれません。生成AIのユースケースとして、コールセンターはよく引き合いに出されます。しかし、寡聞にしてコールセンターのあらゆる業務を完全に生成AIに代替したという話は聞いたことがありません。

──たしかに、そうですね。なぜでしょうか。

 技術レベル上の制約もあると思いますが、それ以上にコールセンター業務には、生成AIに向いている業務と、人間に向いている業務が入り混じっているからだと思います。

 例えば、単に会話をしたり、質問を投げかけたりするだけならば、ユーザーにとっては生成AIのほうが便利です。生成AIには時間や体力の制約がありませんし、家族やお金や体の悩みなど、人間には話しにくい内容も気兼ねなく話せます。これは英会話などの語学学習のサービスでも同様でしょう。語学学習の先生が生成AIならば、発音や文法の誤りを恥ずかしがることなく積極的に会話でき、習熟の速度も早まるはずです。

 しかし、すべてが生成AIならばよいかといえば、そうではありません。特に不向きなのはコミュニケーションにおける意思決定の部分です。いろんな質問ができて、さまざまな回答をしてくれたとしても、生成AIに意思決定を委ねるのは、どこか頼りないわけです。

 そこで、人間の力が必要になります。コールセンター業務でいえば、質問や事実確認、聴取など課題把握の部分は生成AIが担当し、提案や意思の確認など意思決定に関わる部分は人間が担当する必要がある。

コールセンター業務と生成AI
資料提供:株式会社ビービット/クリックすると拡大します

 このように生成AIを活用するにしても、生成AIには何ができて、人間とどう組み合わせていくべきかという視点は、必ず求められると思いますね。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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