プロダクトリリースと同時にコミュニティを立ち上げた理由
小島 英揮氏(Still Day One合同会社/パラレルマーケター、以下敬称略):最初に、IoT通信プラットフォーム事業を行うソラコムがプロダクトリリースと同時にコミュニティを立ち上げた経緯を伺ってもよろしいでしょうか。
玉川 憲氏(株式会社ソラコム 代表取締役社長):2015年の9月末にプロダクトをローンチしたのですが、その2ヵ月前から“プライベートβ版”として、50社以上に使っていただいていました。同年の10月に開催した最初のユーザーイベントでは、その方々も含め、ローンチ後に触ってくださったアーリーアダプターの方に発表していただいています。それ以降、ハードウェアやクラウドなど様々な専門分野を持った方たちが集まって交流するユーザーグループとして活動しています。
小島:私や玉川さんが以前携わっていたAWSのユーザーグループ「JAWS-UG」もそうでしたが、通常、プロダクトが市場に受け入れてからファンを起点にコミュニティができていきます。しかし、ソラコムの場合はプロダクトリリースと同時にコミュニティが立ち上がっており、プロダクトの成長とコミュニティの成長がシンクロしているように感じます。
玉川:ソラコム創業時からAWSのように私たちのサービスをユーザーの方々ご自身で勉強して活用していただきたいと思っており、開発者やユーザーの皆様が盛り上がるようなプラットフォームを目指していました。それを実現するためには、ユーザーコミュニティが最初から不可欠だと考えました。
小島:最初からコミュニティを立ち上げることでフィードバックループが回るようにしたかったのは、スピードを重視したのでしょうか。
玉川:私たちは「IoT通信プラットフォーム」という新しい領域を作ろうとしており、できるだけ早くユーザーの皆様の声を聞き、フィードバックを受けて改善していくというサイクルを回そうとしていました。なので、創業当時は、エンジニアも自分たちが作った製品がどのように使われているのか直接聞きたがっていたし、ユーザー向けイベントには社員全員が参加するのが当たり前な雰囲気でしたね。
小島:フィードバックループを回す体制がなければ、プロダクトとコミュニティを同時並行で立ち上げるのは難しいということですね。
玉川:そうですね。プロダクトもリリース時点でプラットフォームの性質がなければなりません。ユーザーの方々が自分でいろいろ触ることができ、そのフィードバックが製品に戻ってくるように設計しなければ難しいと思います。
小島:これからプロダクトリリースを控え、将来的にはユーザーコミュニティも考えている企業には、ソラコムのやり方がベンチマークになりそうですね。
ここからは、玉川さんに以下の4つのポイントで企業のコミュニティ運営について伺っていきたいと思います。
- 企業とコミュニティの責任分岐点
- コミュニティ内での顧客とパートナーの扱い
- 日本と海外でのコミュニティの違い
- コミュニティのビジネス貢献度のはかり方