本調査では、外出自粛をきっかけに今後はオンラインのさらなる活用、および、オンラインとオフラインを併用した購買行動が加速化することが判明した。オンラインと店舗の利用を継続すると回答した割合が最も多かったのが、食料品や生活必需品(約7割)だったことに対し、オンラインのみでの利用を継続すると回答した割合が多かったのは、金融サービス(約6割)となった。また、オンラインサービスの拡充が最も望まれている分野が医療サービスであることも明らかとなった。
主な調査結果
1:生活の基盤となる商品を中心にこれまで店舗購入のみだったものが今後オンラインと店舗を併用した購入へシフト
外出自粛をきっかけにオンラインで購入した商品で最も多かったのは、「生鮮食品以外の食品・飲料」(30.9%)となり、次いで、「本・雑誌・コミック」(28.8%)、「衣類・靴」(26.4%)が挙がった。一方で、コロナ収束後はオンラインと店舗を併用すると回答したものが、「飲食店が提供する食事」(68.2%)、「生活必需品・トイレタリー」(67.3%)、「生鮮食品」(67.3%)の順に挙げられ、生活の基盤となるものや緊急性の高い商品などは、今後、店舗だけでなくオンラインでも購入する意向が高い傾向にあることがわった。
2:オンライン購入は効率性、店舗購入は実物確認のほか、店舗に行くこと自体の楽しさや偶然の発見への期待など、気分の高揚を求める傾向
オンラインで商品を購入するメリットには、最も多くの項目で1位が「配送してくれる」、2位が「商品の検索や比較をしやすい」となり、外出を控える目的や効率性を重視する傾向が見られた。一方で、店舗で購入するメリットには、最も多くの項目で1位が「実物を確かめたい」となり、2位、3位には「店舗に行くこと自体が楽しみ」、「店舗だと知らなかった商品を発見できる」など、店舗ならではの体験を求める傾向が見られ、オンラインと店舗での購入では、消費者が求めるものが異なることがわかった。
- 「飲食店が提供する食事」(60.0%)「本・雑誌・コミック」(48.2%)「化粧品」(42.2%)では「店舗に行くこと自体が楽しみ」との回答が多く寄せられた。
- 「酒類」(40.7%)「生活必需品・トイレタリー」(31.7%)「生鮮食品以外の食品・飲料」(29.1%)では、「店舗だと知らなかった商品を発見できるから」との回答が目立つ。
今後店舗には、そこでしか体験できない価値やブランドの世界観を五感で感じることができる体験の提供がより一層求められる。一方、店舗とオンラインの両方でサービスを提供する企業はこれまで以上に購入までの体験、購入時の体験、購入後の体験をより丁寧に設計することで、ブランド体験価値を上げ、顧客との良好な関係を維持することが重要になる。
3:外出自粛をきっかけに、オンラインの金融サービスのメリットが浸透
銀行、保険、資産運用サービスを含む「金融サービスの利用」については、利用者全体の約6割(58.2%)が今後もオンラインでの利用を継続すると回答。他のオンラインサービスでは対面/店舗と併用する利用意向が最も多かったことと比べると注目すべき結果といえる。特に、金融サービスをオンラインで利用する理由として、「オンラインでも満足できるサービスが受けられると知ったから」(37.9%)や、「店舗や開催場所に行く時間がないから」(37.1%)が最も多く挙げられており、外出自粛をきっかけにオンラインサービスによる正確性や効率性といった、店舗に行く以上のメリットが認識されたと考えられる。
4:オンラインサービスが発展すれば利用拡大の可能性が高いのは、押印や署名および本人確認が必要な手続き、そして医療機関の受診
「オンラインサービスが発展していない」ために外出自粛期間中にやむを得ず外出した理由として多く挙げられたのが、「押印や署名が必要な手続き」(51.9%)「本人確認が必要な手続き」(42.7%)。これは、先日アドビが発表した「中小企業経営者に聞いた判子の利用実態調査」にもあるように、生産性向上のために判子の習慣をなくしたほうがいいと考える経営者が多い一方で、電子サインなどを利用した電子契約の利用率が限定的である点とも一致している。
また、「オンラインサービスが発展していない」ために外出を延期したものとして最も多くの回答が寄せられたのが、「通院・受診」(48.5%)となり、また、今後のオンラインサービスで求めることの第1位に「医療分野での普及」(34.1%)が挙げられたことから、医療分野におけるオンライン化は、外出自粛期間を通じてさらにニーズが高まっていることがわかった。