今後5年間、人工知能(AI)などの新たなテクノロジーにより、デューデリジェンスの実施期間は現在の3~6か月から1か月以内に短縮される見込みなど、M&Aのプロセスが変容を発表した。
レポートでは、北中南米や欧州・中東・アフリカ(EMEA)、アジア太平洋(APAC)の企業やプライベートエクイティ企業、投資銀行、法律・専門サービス企業の2200人以上の担当者に、M&Aの現在の状況および将来の見通しについて尋ねた。回答者の48%は、デューデリジェンスがデジタルトランスフォーメーション(DX)の主要領域であり、技術の進展による恩恵を一番受けると想定している。また回答者の半数以上(56%)は、2025年までにデューデリジェンスの期間が平均で1か月以内になると予測。現在の状況と比べてみると、北中南米やEMEA地域(63%)では完了まで1~3か月を要し、 APAC(66%)諸国では3~6か月を要している。
さらに回答者の67%が、M&Aプロセスにおいて5年以内にデジタル成熟度が向上し、技術が高度に洗練されると予測。一方でディールメーカーの82%が、現在のM&Aプロセスのデジタル成熟度や技術の洗練化度合いは中レベルとみている。地域別に見ると、ディールメーカーは、デジタル成熟度が高く技術面でも洗練化されたM&Aプロセスの導入はEMEA地域が最も遅れると考えている。
変化するデューデリジェンスの要求
業界のデジタルトランスフォーメーションが完了したとみなされるまでには、まだ成されるべきことが残っている。投資面での制約や、データセキュリティ・データプライバシーを巡る問題は、取引完了にとって依然大きな障害と考えられている。例えば、ディールメーカーは、テクノロジーによりデューデリジェンスのプロセスが加速する可能性に言及し、AIや機械学習のテクノロジーを備えたバーチャルデータルームがデューデリジェンスを最も加速させると、35%が回答。しかしながら、ESG認証の提供、データプライバシー規制の順守など、対象企業の能力が取引の成功を左右するとみられている。ディールメーカーの78%が、対象企業のESG認証に対する懸念のために取引の進行プロセスが妨げられた経験があると回答した。一方で、40%がデータプライバシーへの懸念が取引に同様の影響を与えると回答している。デューデリジェンスへの対応ができないため、取引中止の可能性があるとして、データセキュリティやサイバーセキュリティが最大の課題であると回答したM&A担当者は36%。また、3分の2以上(69%)のディールメーカーが、ESG要素やデータプライバシー規制が2025年までのM&Aのデューデリジェンスにおいて非常に重要な検討事項になると回答している。両者とも、現在の10%ほどから上昇した。
その他の注目点
- M&A担当者の31%が、取引に関する不完全・不正確な文書や情報がデューデリジェンスを遅らせる最も大きな要素であると回答
- M&A担当者の65%が、新たなテクノロジーにより、5年以内にデューデリジェンスプロセスにおける分析能力が向上すると考えている
- M&A担当者の30%が、安全なエンドツーエンドプロセスやデータ管理、コミュニケーションがテクノロジーによって最も向上すると考えている
- M&A担当者の50%が、バイヤーの権限内での行動に関する知見の欠如が販売用資産のマーケティングにおける最大の課題であると回答
今回の調査は、2020年2~4月にEuromoney Thought Leadership ConsultingとDatasiteが実施。