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Pepperには人とロボットの共生をめぐる知見が凝縮

「SoftBank Technology Forum 2014」レポート

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ソフトバンクが立ち上げたロボット事業「Pepperプロジェクト」。 11月14日に開催された「SoftBank Technology Forum 2014」(主催:ソフトバンク・テクノロジー株式会社)の基調講演では、その開発リーダーであるソフトバンクロボティクス株式会社の 林 要氏が、コミュニケーション・ロボットPepperの可能性を語った。

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ソフトバンクロボティクス株式会社 林 要(はやし かなめ)氏
ソフトバンクロボティクス株式会社 林 要(はやし かなめ)氏

「Pepperが始まったのは、2010年のソフトバンク新30年ビジョンからでした」と林氏はきりだした。当時は、“情報ビッグバン”が語られていた時代。ムーアの法則により集積数があがり、やがてシンギュラリティ(特異点)を超え、人間の脳より優秀な脳型コンピューターが出現するという予測が語られた。「知識の自動的な処理」と「アルゴリズムの自動生成」、この2つの実現が、脳型コンピューターの条件だった。しかしその後、テクノロジーの状況は大きく変化した、と林氏は語る。

2010年以降の機械学習が急速に進化したことで、“データをたくさん集めることで、アルゴリズムを自動に作成する”という学習型のコンピューターが実用化され始めました。 これについてのわかりやすい例は、チェス(コンピューター)対人間、将棋(コンピューター)対人間です。1997年に、IBMのチェスのコンピューター、ディープ・ブルーが人間のトッププロを破ったことはかなり衝撃をよびました。つい最近、将棋でも、コンピューターが人間を破りました。ただ97年当時、チェスで人間が破られることは想定の範囲内だったのですが、将棋でも破られるだろうと予測した人は少なかったのです。 それはなぜでしょうか? チェスと将棋では、計算力と複雑度での、圧倒的な差があるからです。

大量データが知性をつくる

チェスと将棋のコンピューターは、どちらも探索空間での「しらみつぶしの計算」をおこなう。その計算力がチェスと将棋では、10の100乗ほど違うという。将棋の場合、とったコマをもう一度打てることによって、複雑度が飛躍的に高くなる。しかしチェスと将棋の差は10の100乗であることに対して、コンピュータの計算能力は、10の3乗しか上がっていない。つまりここには、「10の97乗分のギャップ」がある。コンピュータの速度の進化だけでは将棋は勝てなかったはずだ、と林氏は言う。将棋でコンピュータが人間に勝てた原因は、「しらみつぶしの計算力」の向上だけではなかった。大量の過去の譜面を読み込み、次を予測する機械学習の成果だった。

チェスの時代のディープ・ブルーは、知能というよりは、どれだけ並列で、どれだけ早く、単純な計算をするのか、こうした点に集中するコンピューターでした。 それに対して、将棋のコンピューターでは過去の大量の譜面を読み込んで学習し、今の盤面の場を判定して、次の1歩をつくることをおこなっています。正確にはアルゴリズムを新規に作成しているとは言えないわけですが、少なくとも“次の一手をつくる”という意味でとらえれば、アルゴリズムを新しく作っているようなものになっているわけです。 つまり「大量のデータをとる」ということが、「知性をつくる」ということを意味する時代になったのです。 今、人工知能の専門家に、何が一番欲しいですかと聞くと、新しいコンピュータでも、すごいアルゴリズムでもなく、ロバスト(堅牢)で大量のデータが欲しい、ただそういうデータは色々な意味で取得しにくい、だから研究が進まない。データが一番大事だということに、気づきはじめたのです。

機械学習は様々な領域で実用化されている。Speech To Textなどの人の言葉をテキスト化するような音声認識や画像処理などが実例だ。しかし、こうした実用化を進めるためには、実データがまだ不足している。 ソフトバンクの販売や展示を通じた大規模展開によって大量のデータを獲得することは、ロボットの知性をつくることにつながるのだ。

人間のすごいところは、ごく少数のデータで学習ができることなんですね。それは進化の過程で、少ない情報から未来を判断しなければ、生き残れなかったからで、自然淘汰の結果です。なので私たち人間は、コンピューターほどたくさんのデータを必要としない。限られたデータで多くのことを学べ、一人でもちゃんと学習して成長できる。 機械学習というのはそのレベルには、とうてい追いつきません。ただし大量のデータがあれば、そこそこ学習ができ、人間のような思い込みも少なくなってきます。

Pepperが19万8000円で販売される理由、それは単にビジネスだけではなく、未来の脳型コンピューターのためでもある。

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