商品データベースの高い完成度が購買機会を創出する
商品データは、「自社で取り扱う商品のデータをどれだけしっかりと保持できているか」が重要だ。その中には、商品価格や原材料等、誰が見てもわかる“客観的な属性情報”と、企業毎に異なる商品のカテゴリーやジャンルといった、人の好みや感覚を反映させた“主観的な属性情報”がある。また、顧客データには、年齢や性別などの「定量データ」とアンケートの回答やSNSの投稿などの「定性データ」がある。この2つを紹介した上で、「商品データ」を作る工程の自動化について深掘りしていく。
たとえば、スポーツ用品を取り扱う店で、基本的な商品データは商品マスターに入っているとしよう。顧客のAさんが「新しい、ローカットで人とかぶらないような色のスニーカー」が欲しいと考えている場合、Aさんがニーズにマッチするような商品を見つけるのは必ずしも容易ではない。Aさんの細やかなニーズに対して、一般的な商品マスターのデータのままではマッチする情報を提供できないからだ。しかし、この商品データが、「履き口はローカット、ソールはラバーで、スタイルはシティスター、2020年リリース」といったような情報までデータが拡張されていれば、探し出してAさんに訴求できる。つまり、商品のデータベースの充実度が今後の購買機会の創出、そしてさらに続くDXの成否を決めるというわけだ。
平原氏は「データ基盤をどう作るか、しっかり考えることは重要だが人手はかけられず、データは増やす必要がある。この相反する課題の解決策を考えなければならない」と語り、その1つの解決策として“ハイパーオートメーション”を挙げた。AIやRPAの技術を組み合わせることで、人間の代わりにソフトウェアロボットに業務を実施させるという手法だ。データエントリー領域でのAI活用による「商品登録業務の自動化」は、既に米国大手小売で実施されており、大きな成果を得ているという。
たとえば、全米トップ3に入る大手小売企業では、様々なサプライヤーより受け取った、商品カタログや商品画像、商品の価格表などのエクセルデータから、情報の読み取り・抽出、抽出した情報の構造化、商品マスターのデータベースへの入力までを「商品登録AI」で自動化している。
また、アパレル企業の場合、サプライヤーからの商品写真から、袖丈の長さや襟の形、プリントの柄などの情報をAIが取り出し、商品情報にあるブランド名などの属性と合わせて構造化して自動的に格納する。他にも、工具のカタログなど様々な分野に活用が可能だ。
商品価格や原材料など客観的な属性情報を抽出し、商品カテゴリーや商品ジャンルといった主観的な属性情報の推定分類を行うという2段階によって、人ではなく「学習させたAI」に商品登録・分類を実施させると。AIの精度が気になるところだが、最新のテクノロジーを正しく使うことによって精度は90%以上にも上り、人間と比べても遜色ないレベルにまできているという。