両社は、建築現場内におけるロボットの自律移動の実現に向けた課題解決に取り組む共同研究を2018年に開始している。その後、現場の画像、3Dデータ、図面情報の収集および深層学習、コストを含めた実用的なセンサ構成の検討、現場での試行実験を積み重ね、iNohの開発に至ったという。
iNohを搭載することで、GNSS(全球測位衛星システム)や人による事前設定がなくても、各種ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境を認識し、日々刻々と状況が変化する現場内を安全かつ確実に移動できるようになる。
実用化の第一弾として、iNohを搭載したAI清掃ロボット「raccoon(ラクーン)」を開発、首都圏の現場に導入開始した。今後、iNohを巡回や資材搬送などを担う各種ロボットに実装することで、建築現場へのロボット導入をさらに促進していくとしている。
iNohの主な機能
1.マルチセンサによる自己位置推定および3次元空間マッピング(SLAM技術)
魚眼カメラ、LiDAR(レーザー照射による測距装置)、IMU(慣性計測装置)など複数のセンサを高度に統合することで、変化の激しい非GNSS環境においても自己位置の正確な推定が可能。また、得られたデータから3次元空間をマッピング。
2.深層学習による高度な周辺環境認識
深層学習技術を用いて現場の膨大な画像データを学習することにより、障害物や高所作業車などの移動物、立入禁止エリア、作業員などを正確に、かつ安定して認識可能。
3.リアルタイムナビゲーション
ロボットが自己位置や周辺環境を認識し、障害物を回避した作業ルートをリアルタイムに自動生成するため、作業範囲を限定するマーカー類の設置など、人による事前設定が不要であり、現場納入後、即座に利用可能。
iNohを初実装した建築現場用のAI清掃ロボットのraccoonは、2つの清掃モードを搭載しており、本体の操作画面から最短3タッチの指示で、コンクリート床面にあるゴミや粉塵を自律移動しながら清掃する。raccoonを首都圏の複数現場に試験導入した結果、100分の連続稼働で約500㎡のエリアを清掃できるなど、iNohの実用性を確認したという。
- おまかせ清掃モード:現場内の地図や作業員の指示がなくても、自ら清掃可能エリアを探索しながら自律清掃
- 領域清掃モード:清掃可能エリアの地図を自動作成後、連携する施工図面上から清掃領域の指定が可能
今後は、raccoonを鹿島建設の建築現場に順次展開。あわせて、iNohを巡回ロボットや資材搬送ロボットなどに搭載し、建築現場へのロボットの普及・展開を促進する。さらには、自律移動が求められる他産業のロボットへの展開も視野に入れて、iNohのさらなる機能向上に取り組んでいくとしている。