売上1.8兆円企業の「イノベーションリーダー」が担う2つの役割
イノベーション鈴木氏(以下、イノベーション):まずは大東建託さんの会社のご紹介と、遠藤さんご自身の役割についてお聞かせください。
遠藤勇紀氏(以下、遠藤):大東建託グループは、土地オーナー様にアパート・マンションの建築を提案し、その後の管理までを一貫して行うビジネスモデルを展開しています。「いい部屋ネット」ブランドでおなじみの日本一の管理会社であり、現在は売上高が約1兆8,000億円を超え、従業員数は1万8,000人を擁する企業規模になります。
イノベーション:1兆8,000億円企業の新規事業推進となると、かなりプレッシャーもありそうですね。遠藤さんの立ち位置はどういったものになるのでしょうか。
遠藤:私はプライム上場の人材系企業出身で、大東建託には中途採用にて入社しました。現在は、「新規事業を生み出す」というミッションのもと、グループ全体の新規事業推進に従事しています。具体的には大きく2つの役割があり、1つは社内新規事業制度「HIRAKU」の運営です。元々は「ミライノベーター」という名前でしたが、2025年にリニューアルしています。もう1つは、スタートアップとの協業やCVCの立ち上げといった、オープンイノベーションの推進です。
イノベーション:人材系の企業で新規事業のご経験があり、その後大東建託へ移られて、社内制度の改革とオープンイノベーションの両輪を回されているわけですね。今日は特に、社内制度のリニューアルについて詳しく伺いたいと思います。
「社長になれる」から「個人の成長」へコンセプトを転換
イノベーション:新規事業提案制度は旧名の「ミライノベーター」から数えて7回目で、今回のリニューアルで応募数が劇的に伸びたと伺いました。これまでの変遷も含めて教えてください。
遠藤:最初「ミライノベーター」として2020年にスタートしました。応募数の推移を見ると、第1回こそ450件ありましたが、その後は163件、209件、120件、120件、112件と推移していました。そもそも、毎年コンスタントに100件を超える応募を集められている素晴らしい制度だったことをベースに今回の全面リニューアルで344件と、前回対比で約3倍に跳ね上がり、再成長カーブを描けました。
イノベーション:前回対比3倍というのはすごい数字ですね。何がそこまで劇的に効いたのでしょうか。
遠藤:下図のような取り組みをしてきましたが、一番大きな要因は、制度のコンセプトを根本から変えたことです。
これまでは、「あなたも社長になれる!」をキャッチコピーとしており、いわば“高い目標”を掲げて鼓舞するスタイルでした。しかし、制度から社長になることは想像以上に大きなハードルがありますし、そもそも大企業の従業員が全員「社長になりたい」と思って仕事をしているわけではありません。「社長になれる」というだけでは、事業を生み出すエネルギーには限界があると感じました。
イノベーション:確かに、大企業の中で「社長になりたい」というモチベーションだけで何年も走り続けるのは難しいですね。むしろ内発的な動機に訴求する必要があると思います。
遠藤:おっしゃるとおりです。そこで今年は、「社長になれる」から「本質的な個人の成長・スキル開発」へと大きく舵を切りました。新規事業に取り組むプロセス自体が、自身のキャリア開発やスキルアップにつながる。そういった内発的動機付けを重視し、その中で結果として「社長に近づく」設計に変えたのです。
