AI時代、人間の仕事は二点に集約される
Biz/Zine編集部・栗原茂(以下、栗原):藤井さんは2007年にアクセンチュアに新卒入社され、現在は戦略グループのAI関連ビジネスのリード、さらには社内のAI活用を推進するグループの運営など、まさにAIによる企業変革の最前線にいらっしゃいます。AIによって知的労働の在り方が激変する今、なぜあえて「コンサルのプロジェクトマネジメント(スキル)」という、ある種のアナログなチーム運営をも含むテーマで執筆されたのでしょうか。
藤井篤之(以下、藤井):理由は大きく二つあります。一つは、世の中にある「外資系コンサルのスキル本」の多くが、ロジカルシンキングやスライド作成といった「個人の手元スキル」に終始していたことへの危機感です。生成AIが登場したことで、これらのスキルの希少性は急速に失われつつあります。対話型AIを使えば、一定水準のロジックツリーやリサーチ結果は誰でも数分で手に入ります。つまり「スキルの民主化」が起きている。そうなった時に、プロフェッショナルとして最後に差別化要因になるのは、個々のスキルを統合して「チームとしてプロジェクトをどう回すか」という、より深い階層の(プロジェクト)マネジメント能力だと考えたからです。
もう一つは、日本全体の知的生産の底上げをしたいという想いです。AI時代、人間の仕事の中心は「新しい価値を作る」か「問題を解決する」かの二つに集約されるだろうと捉えています。これらはいずれも、一定の期間内に、限られたリソースでゴールを達成するという「プロジェクト」の性質を持ちます。プロジェクト型の働き方があらゆる職種において「標準的なOS(基盤)」になる。その作法を伝えることは、今のタイミングで不可欠だと感じました。
2007年アクセンチュア入社。戦略部門の公共サービス・医療健康領域に所属し、特にスマートシティ、地方創生、都市開発、食品・農林水産業、ヘルスケアといった、日本国内の公共セクターや規制産業に深く関わる分野を専門とする。官公庁・自治体から民間企業まで、幅広い戦略策定プロジェクトに携わる。現在は、戦略グループにおけるAI関連ビジネスのリードを務めるとともに、ビジネス コンサルティング本部のリサーチチーム責任者も兼任。
AIが代替できない「意思決定」と「腹落ち」のプロセス
栗原:AIによって、コンサルタントあるいはビジネスパーソンの仕事の「中身」はどう変化していくのでしょうか。
藤井:最も大きく変わるのは「検証」のスピードと密度です。アクセンチュアの戦略グループでも、仮説を立てた後のリサーチや資料の読み込みはAIによって劇的に高速化しています。かつて若手が1週間かけていた作業が30分で終わることもある。しかし、その分だけ人間側の「判断」や「解釈」の重みが増しています。AIは答えの候補を出してくれますが、その答えを材料として何百億という投資を決断し、責任を負うのは人間です。
また、コンサルタントの価値はリサーチなどの資料を納品することではなく、顧客の売上を伸ばすといった実利的な「アウトカム(成果)」や顧客に「意識変化」をもたらすことへとシフトするでしょう。AIとの会話だけでは人は本当の意味で「腹落ち」しません。クライアントのCEOや役員と対話し、彼らが自分の言葉で未来を語れるように演出する。こうしたエモーショナルな領域や「合意形成」のプロセスに、人間の価値が色濃く残るはずです。
