DXは生産性を向上した“先”が重要
柿崎:ここで、最近のDXの事例を1つ紹介します。2020年6月、塩野義製薬が小児のADHDに対して世界初となるゲームベースのデジタル治療用アプリを開発したと発表しました。これは、製薬会社ではなくDeNAなどのゲーム会社がライバルになるという、従来と異なる取り組みです。このプロジェクトの担当者とお話したところ、美術館巡りや山登りが趣味で、無心で黙々と歩いて樹木や滝など自然の造形物と邂逅することでアイデアが出てくると語っていました。マネタイズや生産性向上の考え方が起点ではないんです。
今、生産性向上のためにDXに取り組んでいる企業が多いと思います。しかし、山口さんが書籍の中で、世界の労働生産性上昇率は下降していることや、テクノロジーイノベーションが実際に経済成長に大きな影響を与えていないことを指摘しているように、生産性向上のためだけにDXを推進するのは、目的が違うと私も思います。エリックさんはどうお考えでしょう。