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山口周氏、松永エリック・匡史氏が語る、社会的イノベーションを成功させるためのDXとは?

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言から早くも1年が過ぎようとしている。経済におけるあらゆるシーンに大打撃をもたらした新型コロナウイルスだが、皮肉なことに世界から取り残された日本のデジタル化の追い風ともなった。2021年は経済産業省が掲げる「DXファースト期間」の幕開けの年。この機を逃し、失われた10年を繰り返すのか、再び世界で戦うために行動に移すのか。
 Sansan株式会社は「Sansan Evolution Week 2021 Spring - The Dawn of DX -」と題したオンラインイベントを開催。その中から、「Business as Art -社会的イノベーションを成功させるためのDX-」と題したセッションの様子をお届けする。登壇者は、青山学院大学地球社会共生学部教授/アバナード株式会社デジタル最高顧問/音楽家の松永エリック・匡史氏と、独立研究家/著作家/パブリックスピーカーの山口周氏。モデレーターはSansan株式会社デジタル戦略統括室室長/一般社団法人CDO Club Japan事務局マネージャーの柿崎充氏が務めた。

[公開日]

[著] 比惠島 由理子 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

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日本のDXはアート以前に“理性”のレベルが低い

柿崎充氏(以下敬称略):アートのセッションを行おうと考えた理由を最初にお話します。私は知人の勧めでカメラを嗜んでいるのですが、経営者であるその知人が、アートに触れているとどんなことでも乗り越えられると話していました。その方含め、私がお会いしている多くの経営者・リーダーが、2017年に刊行された山口さんの著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』の読者です。また、エリックさんは日本におけるDXの仕掛け人で、CDO(Chief Digital/Data Officer)フォーラム2017でアーティストの思考の重要性を講演していました。あれから3年以上経ちましたが、私にはお二人の説く“アート”の考え方がまだ世の中のDXに根付いていないという問題意識があり、ずっとアートのセッションを行いたいと思っていました。

 今回、アーティストの思考とは何か、そしてDXの本義を問い直し、経済的合理性に基づく“テクノロジーイノベーション”としてのDXから、社会的課題を解決する“ソーシャルイノベーション”としてのDXへ転換する必要性についてディスカッションしていきたいと思います。

 まず、現在のDXにおける問題ですが、日本のどの会社もDXというと「分析」「論理」「理性」ばかりに軸足を置き、いつ・何をやりたい、というのがない。これができている会社は5%ほどという印象です。

 1996年に刊行された『知識創造企業』(野中郁次郎・竹中弘高 著)では、形式知(言葉、数字、データ、公式、方程式、音、図表)と暗黙知(体感、経験、五感、直感、洞察、感情、フィーリング、理想、信念、価値観、思い)について説明していますが、この暗黙知が根付いていない。さらにDXとなると、形式知に偏重してしまうのだと思いますが、どうでしょう。

松永 エリック・匡史氏(以下敬称略):まず、アーティストの思考についてですが、私がアーティストとしてどういう頭の構造で活動してきたかというと、物心がついた時から多くの時間を理性のトレーニングに費やしてきました。音楽家は論理やデータ、クラッシックの色々な範例にひたすら取り組んでいて、私の場合、アーティストとして感性を発揮できたのはかなり成長してからです。実はアートはすごく理性的なものがベースになっています

 私は、今のビジネスパーソンの問題点は「理性のレベルの低さ」だと思います。いわゆるビジネスの“理性”であるデータ、事実、論理思考が適当で、上辺の20%程度でわかったふりをしている。その状態で今「アートをやりましょう」となっているので、混乱しているのだと思います。

山口周氏(以下敬称略):目的論か手段論かという話で、手段はいくらでも論理で取り組めばいいと思います。ただ、エリックさんのおっしゃる通り、論理も弱いというのはありますね。また、手段はサイエンスや論理ベースである程度考えられると思いますが、目的は必ずしもそうではない。暗黙知に属されるような感性が必要になってきます。

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