新型コロナウイルスの世界的な感染拡大とそれに伴う教育の途絶によって、アジア太平洋地域で数百万人に及ぶ女子が中途退学のリスクにさらされている。国際連合児童基金(ユニセフ)は、東アジア・太平洋地域全体で4,000万人近い女子のうち20%がコロナ禍で遠隔授業を受けられていないと報告している。南アジア・西アジアでは、小学校に入学前から高等教育のレベルにわたる280万人の女性・女子が学校に戻れない可能性がある。コロナ禍による女子教育への影響度はまだ不明だが、女子の未来に経済的な悪影響を与えることは確実である。
中途退学の増加は、男女平等に向けた数十年の進歩を脅かすばかりでなく、女子を未成年での妊娠や早期の強制的な結婚、暴力のリスクにさらす。世界銀行の調査によれば、特に中等・高等教育のレベルで、わずか1年長く学校教育を受けると、女性の平均賃金は12%(男性の場合は10%)増加する。女子の就学率が男子より低いという長らく続いている格差は、過去数十年間で縮小してきたものの、コロナ禍による学校閉鎖と遠隔授業を受けられないことによって、この格差の縮小が鈍化または格差が拡大し、女子の将来の経済的見通しを悪化させる可能性がある。
マーサーアジアのCEOであるRenee McGowan氏は次のように述べている。
「調査によると、女子の教育期間が短縮されれば、その影響は数世代まで及びます。女子は、教育を通じてより多くの収入を得るとともに、自身と家庭のより良い未来を拓くでしょう。女子教育は、男子・男性を含む全ての人に各自の潜在能力を発揮する機会を与え、社会と経済を強固にします。コロナ禍を原因とする男女間の教育格差は、将来の労働力を担う女性が男性より少ないという形で顕在化させ、世界的・地域的に数十年にわたり存在してきた格差を拡大させるでしょう。これは深刻な懸念材料であり、当社はこの取り組みで一翼を担いたいと考えています」
アジアにおける女子教育の推進:P.A.G.E 150
マーシュ&マクレナン(MMC)が今年、創業150周年を迎えるにあたって、マーサーは、今年の国際女性デー(3月8日)にP.A.G.E 150 をアジアで立ち上げる。P.A.G.EはPowering Asian Girls’ Education(アジアにおける女子教育の推進)の略であり、150はMMCの150周年を表している。
この地域的取り組みでは、マーサーアジアにおける11市場(日本、韓国、中国本土、香港、インド、マレーシア、フィリピン、シンガポール、インドネシア、タイ、台湾)の各拠点が、向こう12カ月にわたり最低150時間を費やし、各市場で社会的・経済的に恵まれない境遇にある女子の教育へのアクセスと機会の向上に専念する社会的企業に専門的サービスを提供するボランティア活動を行う。
マーサージャパン 代表取締役社長 CEO 草鹿 泰士氏は、今後の取組みと活動に対し、以下のようにコメントしている。
「教育は人権であり、平等、開発および平和という目標の達成にとって不可欠な手段です。持続可能な開発目標(SDGs)では目標5にジェンダー平等を掲げており、女子教育も重要な課題の1つです。しかし、現下のコロナ禍により、少女たちの教育機会が失われる可能性が出てきました。これは、私たちが生きている社会、世界にとって決して看過できる問題ではありません。マーサージャパンは、キリマンジャロの会やハナラボの活動に賛同し、ともに教育を通じて彼女たちがより輝かしい未来を築いていけるよう、支援していきたいと考えています」
マーサーは、アジアの各拠点における社員の専門知識と能力を活用し、スキルアップや職務再設計などの人材育成プロジェクト、投資助言、医療等給付プログラムの強化、マーケティングや経理などの機能的支援等を通じて、これらの社会的企業による課題への取り組みや将来に向けた組織再編を支援する。
McGowanは次のように付け加えている。
「多くの社会的企業や非営利団体も、コロナ禍によるボランティアや寄付の減少から深刻な打撃を受けており、業務に加え人員の確保、成長が危ぶまれるかもしれません。私たちが信じる最善の方法で、当社は彼らが健全かつ強固な組織としてまた立ち上がり、その先にはこれら社会的企業が教育を通じて今後さらに多くの女子を支援することに期待しています。コロナ禍によって男女間の格差が拡大するリスクへの対応が急務となりました。そうしたリスクを軽減するとともに、将来の労働力に変化をもたらすことに貢献したい、その一心でこの取り組みを推進していきます」
マーサーでは、地域社会に変化をもたらし意味のある影響を与えたいという想いから、社員主導のボランティア・グローバルプログラム ‘Mercer Cares’ に取り組んでいる。