本共同研究の目的は、グロース・キャピタルが提供する新株予約権ファイナンス領域での事例研究を産学連携で行うことで、発行体と既存投資家双方にとってプラスの効果をもたらす再現性の高い条件を発見し、実務に活用していくことだという。初回となる本レポートでは、行使価額修正条項付新株予約権の発行によるエクイティファイナンスにおいて、資金使途および希薄化率の株価への影響を分析。
今回の分析により、以下の3点が確認できたとしている。
- 発表後、株価が上昇する企業の割合とその特徴
- 希薄化率と株価推移の相関性、株価推移の特徴
- ファイナンスによる株価変動幅の目安
特に一つ目の特徴である、「発表後の株価上昇企業の割合」に関しては、エクイティファイナンスの発表から120取引日時点において、「M&A」「事業資金人材(人材面での事業への投資)」「不動産の取得」を資金使途にしたファイナンスは、他と比べ株価がアウトパフォームしやすく、「運転資金」や「設備投資」が資金使途のファイナンスはアンダーパフォームしやすいことがわかった。また、このことから、新株予約権ファイナンスの資金使途の選択自体が投資家にとってのポジティブ/ネガティブ材料となっているシグナリング効果も示唆されており、今後のファイナンス検討における有益な材料となるポテンシャルが示された。
研究サマリー
- 発表後、株価が上昇する企業の割合とその特徴
- 希薄化率と株価推移の相関性、株価推移の特徴
- ファイナンスによる株価変動幅の目安
研究対象
- プロダクト:行使価額修正条項付新株予約権(MSワラント)
- 期間:2014年1月1日~2019年12月31日に発表された案件
- サンプル数:279
一橋大学大学院経営管理研究科 鈴木健嗣教授は、以下のように述べている。
この度は、学問分野としてのエクイティファイナンスの研究を、新株予約権ファイナンスを専門的に手掛けるグロース・キャピタルと産学共同で行うことができたことを、とても喜ばしく思います。新株予約権を活用した資金調達が増える中で、こうして数値的な裏付けを丁寧に分析していくことで、発行体や投資家にとってもファクトに基づいた議論ができるのではないでしょうか。学問的にも、この領域は今後も研究を深める価値のあるテーマと考えています。産学共同による継続的な研究を通して、引き続き、日本企業のファイナンス力向上に寄与していきたいと思います。