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『プロダクトビジョン』ビジネスとデザインの架け橋となり、チームを牽引する“戦略デザイナー”とは?

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 皆さんの企業では、ビジネスや戦略におけるディスカッションの場に「デザイナー」の席はありますか? 近年、「デザイン経営」などともいわれるように、ビジネスにおけるデザインの重要性が高まっていることは多くの方がご存じかと思います。この動きは経済産業省からも後押しされており、同省内の高度デザイン人材育成研究会が2019年3月に発表した『高度デザイン人材育成ガイドライン』では、「グローバル経済社会における産業発展および顧客体験の変革を目標とするDXの推進には、“高度デザイン人材”が不可欠である」と述べられています。  本稿で紹介する『デザイナーによる新たな組織のつくりかた プロダクトビジョン』(Laura Fish・Scott Kiekbusch 著/安藤晶也 監訳/丸善出版)では、「戦略デザイナー」がデザインとビジネス、そしてテクノロジーをつなぎ、“戦略主導のプロダクトビジョン”を推進・実現するプロダクト開発の在り方を知ることができました。ユーザー体験がそのまま企業やプロダクトの価値に結びつき、プロダクトと戦略が密接に結びつく時代。デザイナーのあり方をもう一度見直してみてはいかがでしょうか?

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プロダクトビジョンは組織の“戦略と方向性”を示す「実行計画」

 複雑な戦略とプロダクトのつながりを説明し、プロダクトのあるべき姿を表現する「プロダクトビジョン」。ユーザーの体験やプロダクトの意図を示し、企業と顧客の関係を築くためのストーリーを伝えるものだと、本書で述べられています。

 このプロダクトビジョンにおいて、デザイナーが重要な役割を担う時代が来ています。デザイナーの仕事は、単なるUX/UIデザインや機能づくりなど、外見の製作だけではありません。

 本書によれば、多くの企業において、プロダクトの小手先の機能に固執するあまり「機能=戦略」になってしまっているといいます。しかし、機能は本来「戦略を達成するための戦術の1つ」に過ぎません。プロダクトビジョンは、単なる希望的観測ではなく、組織の価値観や戦略を明確に反映した「実行計画(戦略)」であるということを、重要な前提として押さえておきましょう。

 日本でも、ソフトウェア業界などのスタートアップ企業では、プロダクトビジョンが急速に浸透しつつあります。プロダクトの意図やストーリーを示すことで、小規模なスタートアップやまだ世に出ていないプロダクトが資金調達をしやすくなるからです。また、プロダクト主導型で事業を展開するスタートアップでは、プロダクトビジョンがそのまま企業の戦略と結びついており、その企業の存在理由にもなります。

 しかし、企業が成長・拡大していくにつれ、当初のプロダクトビジョンを維持することは難しくなっていきます。新たなプロダクトやチームの増員、組織の権限・ヒエラルキーなどが次々と生まれることで、これまで保ってきた「単一のプロダクトと企業の戦略」の結びつきが薄れ、プロダクトごとに機能レベルの成果物(アウトプット)を計画するので精一杯になるからです。

 また、大企業化するにつれゆっくりとウォーターフォールモデルの習慣が浸透しているにもかかわらず、過去のアジャイルモデルをそのまま維持しようと躍起になってしまう。結果、小規模なリリースを行うことに必死になり、目先のことだけ考えた“近視眼的なロードマップ”ばかり立ててしまうこともあるといいます。つまり、「プロダクトと戦略の乖離」です。これは同時に、プロダクト開発チーム内での方向性の違いを生み出すことにもつながってしまいます。

 そこで、“戦略主導のプロダクトビジョン”を導入することで、「プロダクトの持続的な成長と顧客体験の向上」が組織の重要な指針となります。デザイナーやエンジニア、ビジネスが1つの指針の下に一体となるのです。そして、エンジニアやビジネスと結びつき、チーム組成と各役割の連携を先頭に立って推進するのがデザイナーです。まずは、一体感と連携を慣習とするアプローチ(ビジョニアリング)を推進することで組織が小手先の機能にとらわれてしまうことを防ぎ、ミッションやパーパスを常に念頭に置くことで、プロダクトの進むべき道を明確にしましょう。

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この記事の著者

名須川 楓太(Biz/Zine編集部)(ナスカワ フウタ)

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