なぜ我々は未来を正しく予測できないのか
ここに2つの予想がある。
実際に空を飛ぶ機械が、数学者と機械工の協力と不断の努力によって発明されるまでには、百万年から一千万年かかるだろう。
-1903年、ニューヨーク・タイムズ(※ライト兄弟初飛行の数週間前に掲載)
コンピュータは、売れても世界全体で5台だろう。
-1943年、IBM社長トーマス・ワトソン
未来を正しく予想することは難しい。特に予想を狂わせるのがテクノロジーだ。飛行機やコンピュータの例のように、その登場の前後で世界を全く別の姿に変えてしまう。
なぜ我々にとって、未来の予想が難しいのか。今回紹介する書籍『楽観主義者の未来予測』は2つの理由を挙げている。1つめは、人間の脳がそもそも悲観的にできているというものだ。過酷な環境への警戒を怠らぬよう、脳は、物事を悲観的に捉えるべく進化した。本書によれば、世のニュース記事の90%は悲観的な内容だという。
もう1つの理由は、ホモサピエンスが15万年間“ローカルで線形”な、変化の乏しい世界で暮らし、これに適応したことだ。現代は、変化が連続する“グローバルで非線形”な世界に変わってしまった。しかし我々は非線形な世界に対応するようできていない。こうした非線形な変化をもたらす主な要因の1つが、テクノロジーだ。「ムーアの法則」に言われるように、一部のテクノロジーは指数関数的に進歩し、世界を変える。
未来をより正確に予測するためには、テクノロジーの評価が不可欠である。また、テクノロジーを評価する上でも、そのテクノロジーが具体的にどう世界を変えていくのかを知ることは、重要な要素であるはずだ。
それでは「未来予測」の観点でテクノロジーをみるとき、どのように評価すればよいか。そのヒントになりそうなのが、前述した『楽観主義者の未来予測』と、『2030年世界はこう変わる』の2冊だ。