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事業開発者が目指すべき「温度ある経済の環」

STARTUP CITY SAPPOROがボトムアップで挑戦する、未来に向けた人と企業の“環”の構築

第4回

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 本シリーズでは「温度ある経済の環」をテーマに、様々な事例と共に、その具体的なポイントを紹介してきました。今回は、行政の取り組み例として、札幌市における起業・創業支援である「STARTUP CITY SAPPORO」を取り上げます。札幌市役所の職員としてプロジェクトの担当をしている札幌市経済観光局(取材当時)の阿部正明氏と、阿部氏と共にプロジェクトを牽引するさっぽろ産業振興財団の中本大和氏にお話を伺いました。

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若者の“想い”と仕事を繋げるための変革を目指す取り組み

 「STARTUP CITY SAPPORO」(以下、SCS)とは、「札幌・北海道から世界を変えるスタートアップの事業成長を支援する」というミッションのもと、札幌市が中心となり、一般財団法人さっぽろ産業振興財団、D2Garage社などと共同で2019年に開始した事業です。

 1970年代半ばから1990年代半ばにかけて、札幌はアプリケーション・システム開発および関連サービス企業約300社の総売上が2,000億円に達するなど、「サッポロバレー」として一世を風靡していました。1976年に「北大マイコン研究会」の設立、1986年には札幌市エレクロトニクスセンターが立ち上がっており、北海道大学発のベンチャー企業、産業界、行政の交流による大きな成長が見られました。しかし、1992年のバブル崩壊、1997年北海道拓殖銀行の破綻などを経て、勢いを失ってしまいます。

 そこからしばらくして2000年には、民間企業の旗振りによって、「札幌BizCafe」がIT起業家のビジネス交流の場として設立されました。「北海道から新しい変革の時代を創る」という目的のもとプロジェクトが動き出したのですが、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災などもあり、大きな成果をあげることができていませんでした。20年近く続く札幌の閉塞感を打ち破り、変革を一気に加速させるために2019年にスタートしたのが、SCSです。

 SCSはなぜ立ち上がったのでしょうか。背景にある問題意識はどのようなものがあるのでしょうか。

「若者たちの道外流出が大きな課題となっていました。札幌市が他の地方都市と比較しても平均所得が低いということが、理由として考えられます。また、地元企業は本州からの受託仕事を主な収入源としており、自分たちの“想い”と直結した仕事が少ない状況も、道外流出の理由の一つだと考えています。将来は北海道で暮らしたいと考えている若者も、就職を機に東京をはじめとする北海道外で仕事をすることもあるでしょう。彼・彼女たちが北海道に戻りたいと考えたとき、札幌に稼げてわくわくする仕事がないとなると、戻ってきようもありません。私たちは、この状況を打破するためにも、大きな変革を目指した取り組みを進めなければならないと考えたのです(阿部氏)」

札幌市 経済観光局 産業振興部 IT・イノベーション課 スタートアップ推進担当 阿部正明氏
札幌市 経済観光局 産業振興部 IT・イノベーション課 スタートアップ推進担当(取材当時) 阿部正明氏

 書類をルール通りに作成して数字をとりまとめるという行政ならではの業務や文化を身につけてきた阿部氏ですが、「行政としては“数字”も大事ですが、それよりもみんなで集まっておもしろい仕掛けを通して盛り上げていくことのほうが大事だと感じている」と述べています。

 また中本氏は、「私たちの取り組みが北海道・札幌の未来を左右すると思って頑張っています。自分の子供が10年後に『北海道はおもしろくない』と言って欲しくないんです」と語りました。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 スタートアップ支援担当課 中本大和氏
一般財団法人さっぽろ産業振興財団 スタートアップ支援担当課 中本大和氏

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この記事の著者

三木 言葉(ミキ コトバ)

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