武蔵野美術大学が立ち上げたソーシャルクリエイティブ研究所および日本総合研究所(以下、日本総研)は、政策検討・立案・実行のモデル化および地域経営や行政変革の推進・支援を目的としたデザインアプローチの活用方法についての共同研究(以下、本共同研究)を開始した。
海外の公共・行政機関では、公共政策の課題の設定から解決までの考え方の見直しとして、人間中心起点の考え方を基盤とする「デザインアプローチ」を取り入れる動きが始まっているという。これまで政策や公共サービスの設計や実施は行政のみが担ってきたが、デザインアプローチでは、サービス利用者となる市民や市民ニーズへの理解を行政が深めた上で、市民や民間企業などの関与を得ながらそれらを行うアプローチ。
デザインアプローチを政策に取り入れる動きは各地で広がっており、例えばデンマークのある都市では、高齢者向けの配食サービスについて、デザインアプローチを活用した改善プロジェクトを民間企業と共同で行うことで利用者の満足度を向上させた。詳細な行動観察やインタビュー調査を行い、そしてメニュー開発や配送方法などの改善を繰り返すことで、各利用者の健康状態や嗜好に合ったサービスの提供を可能とさせているのだという。
本共同研究について
このような「デザインアプローチによる政策形成プロセスおよび政策オプションの創出を市民・企業・行政が共創して行うこと」について、武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所と日本総研は「政策のためのデザインアプローチ」と呼び、昨年度には公務員を対象とした予備調査を行っている。
本年度に実施する本共同研究では予備調査を一層発展させ、海外事例の調査・研究のほか、日本における「政策のためのデザインアプローチ」のモデル化とその実験に取り組む。日本の官公庁や基礎自治体での浸透・定着を目指し、複雑化する政策課題に向き合う行政職員やパブリックセクター従事者が活用可能な方法論やツールの開発を検討。同時に、本共同研究の成果については、セミナーやイベント、研修などの提供を通じて、広く社会に共有していく予定だとした。