「モノが買えない時代」の供給リスク管理のアプローチ
従来、サプライヤ供給リスク対応は、全社的なリスクマネジメント(ERM:Enterprise Risk Management)の観点から進められてきた。全社的なリスクマネジメントでは、リスクの洗い出し、リスク発生時の影響度と発生確率の評価、対応策の抽出、対応策の実行と評価、といった一連のプロセスで進めていくのが一般的だ。
しかし、現在の「モノが買えない時代」における供給リスク管理には、以前のような一括的なアプローチは向いていない。対象となる事業・製品、供給が困難となる品目カテゴリーやサプライヤごとに、考えられる対応策が変わってくるからだ。よりきめ細かく、事業・製品、品目カテゴリーごとに、どのように対応するかを考える必要がある。
たとえば、グローバル展開する事業や製品の場合、国内外で生産拠点を分散し、絶えず調達先をグローバルで探してマルチ化することや、複数のサプライヤのシェアをコントロールすることが求められる。
一方、特定の地域向けのローカル事業・製品の場合、汎用的な調達品以外は、複数の調達先を持つことによって1社への発注ボリュームが下がり単価が上がるなど、コスト増につながることがある。そのため、マルチソース化やマルチファブ化を行う経済合理性がなくなるケースもある。そのようなローカル事業・製品においては、在庫に関する対応策をとることが適切だ。
このように、対象となる事業や製品ごとにきめ細かく対応策を検討し、実施することが必要となる。次項から、サプライヤ供給力不足への対応策として有効な、以下3つの対応策について具体的に解説していこう。
- 対応策1:在庫の確保
- 対応策2:マルチ化
- 対応策3:サプライヤとの関係づくり