グローバル化とデジタル化に向けた戦略的協業
ファーストリテイリングとアクセンチュアは、消費者向けのサービスにおけるデジタルイノベーションの実現に向けて協業していくことを発表した。 6月15日におこなわれた会見で、ファーストリテイリングの代表取締役会長兼社長の柳井正氏は以下のように語った。
今、デジタルによって描かれた未来は現実のものになっている。しかし企業の現実は、これに追いついていない。お客様、社員、サプライヤーと世界中の人々がデジタルによって、同時進行でつながる世界を、アクセンチュアと共に作っていく。
アクセンチュアは、2001年以降、15年間ファーストリテイリングのIT化を手がけてきた。今回の協業は、これまでの関係性を強化するとともに、今後関連する規制機関の承認や両社の最終合意を経たのち、将来的に合弁会社を設立していくことを目指すというもの。
また、アクセンチュアのグループ・チーフ・エグゼクティブのジャンフランコ・カーサーティ氏はこう語る。
今回の協業は、アクセンチュアにとっても重要なマイルストーンとなる。2020年までに世界のトップ10ヶ国で、デジタルテクノロジーで1.4兆ドルもの生産性が向上すると言われる。柳井さんはこうした時代へのビジョンを持っている。ファーストリテイリングは、今後、小売業の世界を変え、さらに小売業の世界を越えていくだろう。
具体的な両者の取組みは、これからだという。今回、明確に取り組みとして発表されたのは、「ユニクロをはじめとするブランドでの全てのお客様の会員化」、「商品開発、生産、物流、マーケティング、店舗、販売、リサイクルなど、すべてのプロセスがシームレスにつながるシステムの構築」。 さらには、社員ひとりひとりのワークスタイルの変革に取り組むとともに、今後のデジタル・イノベーションを担う人材の採用と育成を、両社でおこなっていくという。アクセンチュアと取り組む人材育成の、重点的な項目としては、(1)ビッグデータの活用、(2)クラウドネイティブな技術力、(3)業務とプロセスの変革のためのシステム構築の3点だという。
ファーストリテイリング グループ執行役員CIO 玉置肇氏はこう語る。
両社が単に情報システム子会社と作るということではない。ユニクロでは、これまで「店舗中心」の考え方だった。その考え方は変わらないものの、今後は「お客様中心」への大転換をおこなっていく。ユニクロの店舗では、これまでは1年に1度のお客様も、毎週いらっしゃるお客様も、ともに匿名だった。一方オンラインの方では、購買履歴や要望、サイズまで豊富にデータが収集されてきた。これらをすべてつないで、ブランドの価値を高めていく考えだ。
かつて、ユニクロはポイントカードを発行したものの、辞めた経緯がある。今回の会員化は、他社よりも後発とはいえ、アクセンチュアとに戦略的な提携により、リアルとバーチャルとつなぐ本格的なデジタルビジネスへの参入への表明とも言える。 「オムニチャネルはもちろんだが、それだけではない。すべての“際”(きわ)が無くなる。ファッションビジネスだけではなく、あらゆる業種と戦っていく」。(柳井氏)