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「イノベーターシップ」による事業創造

優良企業が“20年もたない”時代に「ビジネスモデル・イノベーション」に習熟する意味

第3回:多摩大学大学院 教授 / 河野 龍太 氏

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「ビジネスモデル・イノベーション」を実行する組織に必要なものとは?

――「ビジネスモデル・イノベーション」を実践していくことは、組織にとってなかなか難しいものです。もっと自律的に促進していくために、何が必要だと思われますか。リーダー(経営層)、ミドル層、最前線で課題解決にあたる現場社員など、レイヤーに分けて、お話しいただければと思います。

河野:
 まず「経営層」ですが、既存事業に依存している状況に対し、危機感が薄いように感じます。現時点では優位性を保っていても、予想外の分野から競合が登場して業界が一変することもあります。現在収益を上げている事業でも、“一時的優位”に過ぎないと認識すべきです。

 例えば、アメリカのS&P500にリストされている優良企業の平均寿命は、1960年前後は約50〜60年でした。しかし、2010年以降で見ると約18年と劇的に短くなっています。もはや、イノベーションを起こし続けないと、企業は生き残れない時代です。今日の経営者が最重要課題として力を注ぐべきは、競争優位はもはや一時的にしか維持できないと認識し、イノベーションが継続的に起こる組織と企業文化をつくることでしょう。そのためには、不確実性の高い事業環境に対処するための組織やプロセス、人材育成、企業文化等における課題を抜本的に点検し、必要な対策を早急に行う必要があります。

 「ミドル」において重要なのは、イノベーション・メソッドを体系的に習得することと、イノベーションを起こすためのリーダーシップとチーム運営のスキルを身につけることでしょう。従来型のマネージャーのスキル、管理手法だけでは、対処できない複雑な課題が増えています。勘違いされがちなのですが、ミドル層のリーダーは必ずしも自らイノベーションを起こす必要はないのです。むしろ、より顧客に近い現場から上がってくるイノベーションの芽を見いだし、若手のアイデアをつぶさず、イノベーションが起こる環境を育むことです。イノベーションを起こすためのマネジメントは、伝統的なマネジメント手法とは根本的に異なります。2つの違いを概念レベルで理解するだけでなく、現場で適用できる実践的なメソッドまでを身につけないと、的確な意思決定はできませんし、リーダー自身がイノベーションの阻害要因になりかねません。

 現場、「最前線の人たち」の重要な役割は、顧客との接点から、イノベーションの種を見つけることでしょう。会社側の立場で自社の製品やサービスにどっぷりと浸かっていると、顧客にとって解決すべき重要な問題(Job)、悩みやフラストレーション(Pain)、期待するベネフィット(Gain)などに気がつきにくくなります。顧客と同じ目線で見ることで、見過ごされていた重要な課題や、潜在的なニーズに気がつく可能性が高まるのです。

 こうした “アウトサイダー”的視点を得るには、同じ会社の人とばかりではなく、自分と異なるバックグラウンドを持つ外部の人たちと積極的に交流し、ネットワークを広げることも大切です。違う業界の、異なる考え方や価値観を持つ人と付き合うことで、様々な角度から物事を見て考えられるようになるでしょう。私が教えているビジネススクールにも色々な業種業界からユニークな経験を積んだ人たちが学びに来ています。こうした他流試合の場に飛び込むことも一つの手です。これからの組織のイノベーション能力は、ある面、個人のスキルとネットワークに埋め込まれていきます。どこに行っても通用するイノベーションスキルを磨くことで、組織にとってもますます重要な存在となりうるというわけです。

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イノベーションなしでは生き残れない時代に、既存事業に依存したままでいいのか?

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