データ経営を可能にする「テクノロジーの進化」と「経営スピードの高速化」
――「データ経営」という言葉に象徴されるように、「データ活用がビジネスの成否を決する」と言われています。しかし、以前からデータ活用は経営にとって重要事項であることは違いありません。どのような部分がどのように変化しているのでしょうか。
萩原:
米国ガートナー社のモデルを借りれば、データ分析は、データから今何が起きているのか(記述的分析)、なぜ起こったのか(診断的分析)、次に何が起きるのか(予測的分析)、どう対処すべきか(処方的分析)と進めていきます。段階的に難易度は上がり、価値も上がりますが、いずれも「見えないものを可視化する」ことが重要な目的です。こうしたデータ分析の考え方は、今も昔も、マーケティングでも経営でも基本的には変わりません。医療、気象、景気などあらゆる分野にも適用できるプロセスです。
それがなぜ、今「データ経営」として注目されているのか。最も分かりやすいのが、技術の変化でしょう。データを取得するPOSやSNS、センサー、ウェアラブルデバイスなど、データが取得できる端末やメディアが多様化し、データ量が飛躍的に増大しました。そして、ストレージやクラウドなどデータの格納場所の進化や、オープンデータ、Data Exchange、DMP(Data Management Platform)といったデータの共有・一元化の場の充実、そして分析結果を迅速に理解するためのTableauのようなBIツールの充実など、データ収集・格納・分析・活用の全方位で技術革新が進んでいます。膨大なビッグデータを迅速に分析し、活用できる環境が整いつつあるわけです。
こうした技術の進化によって、データ分析の目的や手法は大きく変化しています。たとえば、広告の効果測定や新製品の顧客満足度調査、経営状況の判断などは、分析の粒度が細かくなってきました。かつては1年や半年ごとのサイクルでの施策に対する評価が主な目的でしたが、今や短期間もしくはオンタイムでのデータ収集・分析を行い、その結果をもとにチューニングしていくことが目的になりつつあります。新製品に対する印象データは毎週上がってきますし、売り上げ収支なども毎月や毎週はもちろん、デイリーのところさえ増えています。
当然ながら、こうした技術の進化の背景には、ビジネス・経営側における大きなニーズと期待があります。かつてのように1年かけて溜めたデータを分析し、数年後を予測して計画を立てて遂行するというのでは、現在の変化に対応できません。可能な限り「今」を把握し、変化を予測しながら柔軟にビジネスや組織を対応させていく必要があります。テクノロジーはそのニーズに応えてきたわけです。