起業は決してギャンブルではない―必要な「サイエンス」と「マインド」

第4回:多摩大学大学院 客員教授 / 本荘 修二 氏

 1980年代後半から新事業立ち上げの研究やコンサルティングを手がけつつ、現在は多摩大学大学院客員教授としてMBAコースで起業家育成にも携わる本荘修二氏。30年近くベンチャーの興亡をつぶさに見てきた同氏は、現在の日本の事業創造環境をどう見ているのか。事業創造を活性化するために、当事者に必要なこと、社会に求められることを聞いた。

[公開日]

[語り手] 本荘 修二 [取材・構成] 有須 晶子 [編] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ ベンチャー 人材教育

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日本の起業環境で必要なこと

——長年、ベンチャー動向を追ってきていらっしゃいますが、起業環境などに関して日本はどういった経緯をたどって現在に至っているのでしょうか。

本荘:
 戦後復興期にソニーやホンダが生まれた時期から高度成長期を経て大企業中心になり、中小企業の比率は高いけれども、そこに活力があるというよりは下請けになってしまった。結局、アントレプレナーシップがじりじりと失われていったわけです。

 昔はいいと言われていた日本的経営もあぐらをかいているうちに劣化して、社内・社外のアントレプレナーシップが必要だと叫ばれていながら、社会の仕組みがついていっていない。大企業で新しいことをしようとしても割を喰う。起業しようとすれば、胡散臭い奴と見なされて、住宅ローンもクレジットカードの審査も通らない、そんな話になってしまうんですね。

 80年代後半にバブルに突き進んだときも既存企業に活気があったので、アントレプレナーシップの芽はあっても誰も育てようとしない厳しい状況でした。バブル崩壊後は、欧米や日本が成熟経済に入り、新興国も出てきて市場の構造が変わり、インターネットなどの技術革新と相まって、世界的に既存ビジネスの延長では行き詰まり、イノベーションが大切だと唱えられ、先進国を中心にこの10年ほどでいろんな活動が起こっています。

 特に、起業大国であるアメリカを見ると、驚くほど事業創造を育む環境が整っていて、続々といい会社が出てくる。日本は、ベンチャーの経済に対するインパクトがGNP比率で見てもまだ低く、頑張らないとならない状況です。

 日本の起業環境は、規制も厳しい、金も人材もない、ないない尽くしですが、一番いけない、ただし短期的に修正しうると思うのは「起業家をリスペクトすること」です。リスペクトは無形ですが、それがないと人も集まらないし、やる気を出す上では大切です。

 とはいえ、ここ30年で起業をめぐる日本の状況はとても改善しました。大企業もイノベーションのエンジンが弱っていることは理解し始めていて、社内アクセラレーター育成に取り組んだり、専門性を活かしたコーポレートベンチャーキャピタルに力を入れたり、着実によい方向に行っていると思いますね。

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