イノベーションの共通言語として活用が進む「ビジネスモデル・キャンバス」
――河野先生は「Strategyzer」認定トレーナーとして、「ビジネスモデル・キャンバス」を活用する世界の様々な組織の例をご存知だと思います。特に欧米では既に一般的なツールとして使われていると聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
河野:
Fortune500にランクインするような大企業から、立ち上げたばかりのベンチャーまで幅広く使われていますね。民間企業だけでなく、政府や研究・教育機関などでも活用されています。
活用法も様々で、「新規ビジネスの立ち上げ」や「既存ビジネスの再構築」が定番だとすると、「異業種間で協業する際の戦略の理解促進」や「M&Aにおける買収先の分析・ポートフォリオの検討」、また「IT企業の営業マンの営業ツールとして」という例もあります。
ビジネスモデルを俯瞰して、自社の価値と顧客の課題をマッチングする
――日本企業が「ビジネスモデル・キャンバス」のポテンシャルを十分に活用するには、どうしたらいいのでしょうか。
河野:
ビジネスモデル・キャンバスの書き方を理解するといったすぐ習得可能なレベルで終わらせず、組織的で戦略的な活用を目指すべきでしょう。そのためには、経営層の理解と支援がカギになります。日本でもビジネスモデル・イノベーションの重要性を理解する経営層は増えています。しかし、ノウハウやプロセスは、従来のままというケースが少なくありません。ビジネスモデル・イノベーションに組織的に取り組むには、そのための共通言語とツールが不可欠です。GE、P&G、3M、ネスレなどイノベーションをリードする欧米の先進的企業において「ビジネスモデル・キャンバス」が採用されているのは、まさにその理由です。
そして、自社のビジネスモデルを共通言語として可視化するのが「ビジネスモデル・キャンバス」とすれば、CS(顧客セグメント)とVP(提供価値)に特化して、ビジネスモデルを深掘りするのが、「ビジネスモデル・キャンバス」のプラグインツールとして開発された「バリュー・プロポジション・キャンバス」です。顧客への提供価値、バリュー・プロポジションに特化しているのは、それが「成功するビジネスモデルのカギを握る最も重要な部分」だからです。事業の全体構想をビジネスモデル・キャンバスで俯瞰し、顧客にとっての価値をバリュー・プロポジション・キャンバスで深掘りする。2つのツールをセットで使って、ビジネスモデルをデザインするのです。